2013,江端さんの忘備録

(「図書館戦争シリーズ」の)有川浩さんの「キケン」を読んでいます。

I am reading "KIKEN" (the word has two meanings: "danger" and "machine research laboratory") by Hiro Arikawa-san.

そういえば、私も「キケン」なんですよ。

Come to think about it, I belonged in "KIKEN."

著書の中では「機械制御研究部」の話ですが、私が所属していたのは「電気工学部電気/電子工学科機器研究室」、通称「キキケン」と言われたところでした。

In this book, KIKEN means "machine control research laboratory." In my case, that means "electrics industrial engineering department, instrument research laboratory."

ときどき「キケン」とも呼ばれたこともあるのですが、その時でさえ私は脳内では、いつでも「機研」と変換しており、一度たりとも「危険」と変換したことはなかったのです。

Sometimes, my research lab. was also called "KIKEN". My brain then tried translating the word into not "danger" but "research lab."

しかし、私が「機研」であり、同時に「危険」ですらあったことは、すっかり有名になっていました。ええ、もう十何年の前から。

But I belonged to KIKEN, and at the same time, I was KIKEN too. It has already been a famous story.

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有川浩さんは、別段、私の

Arikawa-san has never used my experiments as follows

this story,

や、

that story,

や、

and another story (no wonder).

をモチーフとしてこの著書を書かれた訳ではないと思うのです(あたり前だ)。

基本的に理科系の中でも工学を専攻し、特に男子生徒というのは、小学生や中学生の頃には、一度や二度は、自宅を全壊または消失さえるような実験をするものなのです。

"Basically, schoolboys who major in engineering used to experimentalize explosions and/or fire on the verge of their house extinction."

―― と、会社の同僚(後輩)に語ったとき、

When I told my junior colleague the above,

「それは、アンタだけだ!」と突っ込まれたことがあります。

they shouted, "You're alone." at the same time.

「ええー、そうなの? 何かを壊すことなく、どうして何かを創作できる訳?」

"Is it true? Why do we create something without destroying something?"

といったら、後輩たちに、随分残念そうな顔をされてしまいました(今でも、よく分かりません)。

My junior colleagues seemed to profess regret (I don't know why).

それはさておき。

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最近思うのですけどね、この本「キケン」や、あるいは今クールの放送していた「ゴールデンタイム」や、古い作品の「トラドラ」のような、絵に書いたような「青春時代」

Recently, I think there has been no story like "KIKEN" or "Golden Time" in this season, "TORA-DORA," several years ago.

―― そんなものは、存在しません。

in this real world.

これらの話は所詮は、フィクションです。

These stories are just fiction.

そんな美しくて、かっこいい青春が、都合よく発生する訳がありません。

Such a beautiful and cool juvenescence period doesn't happen conveniently.

ただ、ですね。

But,

いわゆる青春時代と呼ばれる期間に、無茶な実験をする、高嶺の花にアプローチをする(そして玉砕する)、言葉も通じない国にとりあえず行く、というような、いわゆる

for example, trying steepish experiments, prizing beyond your reach (and dismissed), going abroad without using any languages,

「無茶をする」「無謀なことをする」「理屈を考えずに、走ってみる」

"play the goat," "behave recklessly," and "run without thinking."

ということをやっておくとですね、歳を取ってから「美味しい」んですよ。

are good for you when you are old.

何が「美味しい」かというと、自分の中で「歴史改竄」ができるからです。

The reason why you are good is to do "history interpolation" of your life.

さらに、この歳になれば、それらのネタを、若干拡張表現して執筆しても、こつっこむ友人が近くにいません。つまり、

Added, the more you become old, the less your friends exist around you.

―― 「裏」を取られる心配がない。

You don't worry about your friends who do some back research.

自分の「歴史改竄」は、自分の中で「事実」に昇格です。

Your "history interpolation" becomes promoted "true" in your brain.

おめでとう!

Congratulation!

こうなるとですね、例えば、「玉砕した恋の話」と「水素を爆発させる話」を組み合わせて、一つのストーリーにすることすら可能となります。

In that event, you can make a new story in your life, for example, a story to combine the "suicidal attack of your first love" and "hydrogen chemical explosion."

誰がどう見たって、悪質な「歴史改竄」ですが、それをチェックする機関はありませんし、なにしろ自分は「事実」と信じているのですから、やり放題です。

Though whoever thinks that the story is a malicious "history interpolation," nobody checks the facts and stops it. Anyway, you believe that the story is true.

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「無茶をする」「無謀なことをする」「理屈を考えずに、走ってみる」という、「一生懸命」を、全くやっていないと、改竄する「歴史」すら作ることができません。

Unless you do your "Best foot forward," like "play the goat," "behave recklessly," and "run without thinking," you cannot make any of your history.

当然、将来的に昇格すべき「事実」もなくなる訳です。

Naturally, the promoted facts also burn off.

これは「美味しくない」です。

It is not good for you.

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私は、「苦労は金を買ってでもしろ」という格言を残した奴を、一片の疑いなく「アホ」と決めつけていますが、

Though I regard the person who said, "You could buy your burden" as merely foolish,

若い時代の「一生懸命」には、後発的に価値が出てくる可能性があります。

"do your best" in your youth might become valuable after that.

それは「一生懸命」に価値があるからではなく、その後の人生において、「一生懸命」の内容を「歴史改竄」した「幻想」で、自分自身を騙して生きていくことができる(場合もある)からです。

It means that it is valuable for you not to "do your best" but to live your life using an illusion you will make from your "history interpolation."

部屋の中に閉じ籠って、ゲームやアニメを見る日々は素敵な人生ですが、改竄する歴史を作ることは、どうやったってできません。

Though I think playing games and watching animation is a wonderful time for you, it is impossible to make your history yourself.

リアルは、作っておくだけで良いのです。別に充実している必要はないのです。

All you have to do is to make it "Real." It is necessary to make it perfect.

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日本経済新聞に「私の履歴書」というコラム欄があります。

There are columns "personal history" in the Nihon Keizai Shimbun newspaper.

あれが、自己の歴史改竄のサンプル ―― と私は思っています。

I think that it is the best sample of "history interpolation."

じゃあ、お前はどうなんだ?と問われれば、私は自信を持って、

If someone would ask me, "What are you doing in this matter?"

―― 「私は『歴史改竄』だけで構成されている」と、自分で自分を定義できます。

I could define myself as composed of just "history interpolation," Apparently.

2013,江端さんの忘備録

10月に部署を異動したのですが、異動先の共有ルームに「ニューズウィーク日本版」が陳列されていたので、毎日読んでいます。

Last October, I moved to another section, and I found "Newsweek (in Japanese edition) " in the shared area. I read the past issues every day.

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「ニューズウィーク」には苦い思い出があります。

I have a bitter memory about "Newsweek".

大学入学直後、新しい希望に溢れていた私は、どの大学生とも違わず「これからは英語が大切だ」と思い込んでいました。

After entering the college, I was a new fresh student in the full of hope, and I believed that I had to study English very hard.

そして、無謀にも「ニューズウィーク(×日本版)」の年間定期購読を申し込んでしまいました。

Recklessly, I admitted the annual subscription of "Newsweek (in English edition)".

結果は言うまでもありません。

It went without saying that the result.

一ページも開かれない「ニューズウィーク」が、床に詰み上げられただけでした。

Many Newsweek not be opened at all had been stacked on the floor.

そして、このような「自分の能力を客観的に把握できない」「無謀な希望に満ちた若者を狙った」英語商法は、今なお健在です。

Now the business like that, is going strong, that targets young guys who cannot grasp their English performances by themselves, and are full of reckless hope.

営業から見れば、私なんぞ、笑いが止まらない「カモ」ですよね。

I had been a top of the sucker list, and the sales reprehensive had not be able to stop laughing.

会社員になってからも、社員寮の玄関に、英字新聞が配達されているのを見ると、「ああ、ここにも『カモ』になった新入社員が・・・」と思ったものです。

After joining the company, whenever I found English-language newspaper in my co-worker's post in the dormitory, I was afraid that the victim was in here.

最近は同じような商法を、日本経済新聞などがやっていますよね。CMで大々的に。

Now some economy newspaper company did some business using commercial messages.

まあ、それはさておき。

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で、そこから30年近い時間を経て、ようやく「カモ」から卒業した私は、「ニューズウィーク日本版」を日本語で読んでいます。

After about 30 years ago, I was graduated from the sucker list and read "Newsweek in Japanese edition" everyday.

私が「ニューズウィーク(×日本版)」を読めなかった理由の99%の理由は、その能力の欠如ですが、仮に能力があったとしても無駄だったろうと、今になって思います。

Though I know the reason why I couldn't read the magazine was the luck of my English performance, even if I had the performance, the result was same.

―― 内容がつまらん。

"Bored"

「米国大統領の動向」「米国の経済」「中東情勢」「テロ」、こんなネタが、私にとって面白いものである訳がない。

Am I interested in "U.S. president current", "Economy in the U.S", "Middle East situation" and "terror attack" ?

そもそも、コンテンツが私向きではなかったのです。

First of all, the contents were not suitable for me.

コンピュータ、制御LAN、GPSというような記事であれば、英語でも踏ん張ったかもしれませんが、大学生の頃の私であれば、それすらも読まなかったでしょう。

Though "computer", "control network", "GPS" might catch me, it was also meaningless for me in campus life.

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このような英語雑誌等の「カモ」商法。当然批判されるべきものですが、それを言い出すことができる人がいないところに、この商法の巧さがあります。

This sucker list business should be criticized violently, but none of them accuse the business.

でも、どこかにいないかな。

Whoever tries to accuse the company, with saying,

―― お前のところの雑誌、私には一行も読めんぞ!

"I can't read just one line in your magazine."?

と文句を言えるクレーマ。

2013,江端さんの忘備録

初音ミクは、人の声を生成する楽器ですので、どのような歌でも歌わせることができます。

いかなる、思想、歴史、政治、体制、まったく制約はありません。

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今朝、久々に、「初音ミク」のことを思い出して、日記のネタを考えていました。

―― 「初音ミクの『君が代』」は当然にあるだろう。なにしろ、祝詞(のりと)まであったくらいなんだから。

―― しかし、「初音ミクの『インターナショナル』」はないだろう。

―― よし! 今日は、このネタで書こう。

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「インターナショナル」とは、

■社会主義者の歌の一つで、基本的には共産主義革命を目指す運動家によって良く歌われた歌です。

■労働組合運動の団結意識を高める際にも歌われました。

■1960年、70年安保闘争、学生運動でもよく歌われました。

■1917年から1944年の間、ソビエト連邦の国歌でもありました。

それは、まさに「革命歌」

―― 起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し ♪

―― 醒めよ我が同胞(はらから) 暁(あかつき)は来ぬ ♪

―― 暴虐の鎖 断つ日 旗は血に燃えて ♪

―― 海を隔てつ我等 腕(かいな)結びゆく ♪

―― いざ闘わん いざ 奮い立て いざ ♪

―― あぁ インターナショナル 我等がもの ♪

旋律も本当に美しく、多くの革命を目指す人達に愛されてきたというのも理解できます。

実は、私、一番だけなら「歌えます」

当時、もう学生運動の残滓だけが残っていた大学の自治寮で、先輩に教えて貰いました(つまり口伝です)

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「これを、初音ミクに歌わせてみよう! かなり評判になるにに違いない!!」

「今の日本の左翼勢力が、私にテロをかけるだけの力量は残っていないだろう」

てなことを考えながら、それでも、念の為、ネットで調べてました。

初音ミクの「インターナショナル」を見つけて、がっかりでしたが、一応、 聞いてみました。

それで ―― 「自我崩壊」を起こしそうになりました。

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私のもっていた「インターナショナル」のイメージはこちら

「初音ミク『インターナショナル』」はこちら

・・・もう、本当に、何がなんだか・・

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ちなみに、私、赤松健先生の「世界平和戦略」を本気で信じている一人です。

2013,江端さんの忘備録

「宇宙戦艦ヤマト」は、私に

■科学技術の夢とロマンと、

■商業主義の汚さを、

これでもか、これでもか」いうくらい教えてくれた、「大人の階段」を、完璧に具現化してくれた作品です。

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まあ、「夢とロマン」の方はさておき、「商業主義」の方は、こんな感じです。

■死んだはずのキャラクターを、「実は死んでいなかった」ことにして、続編を作る

■都合の悪いストーリーは「なかったもの」としてスキップして、続編を作る

こういう、「とにかくヤマトで儲けろ」というスタンスは、「ヤマト」を深く愛していたティーンの心を酷く傷付けたものです。

私の中では、

「宇宙戦艦ヤマト」= 「詐欺」

という構図が完成してしまいました。

この影響(か、どうかは分かりませんが)もあって、私はその後、このような宇宙戦争を扱ったアニメに興味が持てなくなりました。

例えば、「ガンダム」なる超著名ロングランアニメについて、私は何も語るものを持っていません。

これは、このような、ティーン時代の「負の記憶」に因るところが大きいと思っています。

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ですから、今、放送中の「宇宙戦艦ヤマト2199」も、

『まだ飽き足らず、詐欺の続きをやっていやがるのか』と、腹だしい思いで、まあ、それでも初回だけでも見てやろうか、と、思ったのですよ。

・・・

・・・

■うん、まあ、あのやたら暑苦しくて、鬱陶しい「古代進」が、まあ、ちょっと言い感じになったかもしれないな?

■「森雪」の設定がなかなか意味深になっていて、悪くない。

■ワープの論理(フィクション)が、なんとなく複雑になって、しかも、ちょっと腹に落ちるようにはなっているな。

■ガミラス帝国が、単なる悪の帝国としてではなく、ちゃんとしたヒューマンドラマとして描かれているのは、まあ、評価できるかな。

■都合の悪い、難しい話を、全部「コンピュータ」に押しつけるというスタンスが、改善されているなぁ。

■波動砲の使用に関して、倫理的観点からの批判が採用されている点は、とても良い。

■初戦において、「地球側から戦端を開いた」という、驚愕の設定を導入した点は、高く評価できる。

■なんか、やたら「ドメル」が、かっこよくないか!!

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まあ、そんなこんなで、私は、日曜日午後5時から、私の部屋を完全に立ち入り禁止にして、テレビを見ています。

宇宙戦艦ヤマト2199公式設定資料集の購入は、決定済みです。

2013,江端さんの忘備録

なんの脈絡もなく思い出したのですが、昔、ふと流れていた番組を見て、「凄いなぁ」と、驚いたことがあります。

宇宙警察だったか、宇宙刑事だったか忘れたのですが、ヒーロー戦隊番組がありました。

(調べてみたら「特捜戦隊デカレンジャー」がそれのようです)

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(Step.1)デカレンジャーは、戦闘中に(すでに重犯罪を繰替えしていると思われる)怪人にとどめを刺す直前に、宇宙最高裁判所に連絡し、裁判所の判断を仰ぎます。

(Step.2)宇宙最高裁判所は、即座(2秒くらい)で、◯と×で判決を決め(もちろん、◯になるのですが)、その旨を、デカレンジャーに通達します。

(Step.3)デカレンジャーは、その判決を待って、必殺技で怪人を殺害(死刑執行)します。

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先ず、私が驚いたのは、ヒーロー戦隊番組において、「司法権の独立」という概念を導入した、という点にあります。

デカレンジャーは宇宙刑事であり、当然警察組織に属する公務員です。

警察は行政庁ですから、終審としての判決を行うことはできず、かならず司法(裁判所)の判断が必要になります。

「裁判時間2秒」「判決◯× 」という、めちゃちゃ乱暴な制度ですが(戦場における臨時軍事裁判所だって、ここまで酷くはないだろう)、一応、筋は通している、と言えます。

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次に、驚いたのは、犯罪者を捕縛する刑事と、死刑の執行者が、同一人物であるという点です。これは、全然管轄の違う行政組織が、一体となっているという点です。

このような制度では、怪人の人権を著しく損い、冤罪を誘発し、誤った怪人への刑の執行がされる恐れがある、と感じました。

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多分、これまでのヒーロー戦隊ものに対する、批判をかわす目的があったのかなぁ、などと邪推しています。

だって、ヒーローの彼ら/彼女らは、司法の判断なく、また行政手続を無視して、毎週、独断で死刑執行をやっていたようなものですからね。

デカレンジャーの仕組みでも、なお、冤罪→死刑になった怪人は、かなりいたのではないかと推測されます。

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とは言え「宇宙最高裁判所」という概念は、私に、「その下級審の仕組みははどうなっているんだろう」とか想像させましたし、

「怪人人権擁護局」というものも登場させたら、さらに面白くなりだろうな、と思いました。

デカレンジャーの必殺技炸裂の直前1秒前に、「人権擁護局」からの差止命令が下りた、というストーリーなど考えるだけで、ワクワクします。

デカレンジャーが「えっ?」とか言いながら、必殺技を寸止めするシーンは見ものだと思います。

■「怪人」による宇宙最高裁判所の判決に対するの再審請求や、

■デカレンジャーによる所掌範囲を越えた捜査権の濫用に対する行政審査請求、行政事件訴訟

など、発想は広がり続けます。

楽しいですねえ―― え?そんなことないですか?

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ヒーロー戦隊を作成される番組の皆さま。上記のようなシーンを含めた新しいヒーロー戦隊番組はいかがでしょう。

番組名は、当然こうなります。

「行政と法律と裁判と三権分立を前提に、正義と人権を守るヒーロー戦隊 『インテリゲンチャー』」

2013,江端さんの忘備録

日本国憲法は、太平洋戦争終結後の、日本を占領した連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)、というか、米国政府によって押しつけられたものである ――

という主張を良く聞きます。

―― でも、それが何だと言うのですか?

と私は、逆に尋ねたいのです。

権力の濫用を防ぐ「三権分立」の考え方は、モンテスキューに押しつけられたものですか?

法治主義は、我が国が、近代ドイツ法学を押しつけられれたものですか?

もっと言うのであれば、漢字は中国に押しつけられたものですか。近代医学はドイツに押しつけられたものですか。化学や微分や積分の概念は、欧米に押しつけられたものですか。

―― どーだっていいじゃん、そんなこと。

日本国憲法の発生のプロセスがどうであれ、それをがんばって運用してきたことで、日本国憲法は、我々日本人のものになったのです。

日本人は、よくがんばってきたと思います。

憲法第1条(象徴天皇の規定)なんて、大陸法的観点からも、コモンロー的観点からも「完全に意味不明」な条文です。

はっきりいって、憲法第1条は「法律ではない」と言い切ってもいいと思う。

しかし、誰が起草しようが、それが、単なる理想や理念を語っていようが、法律と呼べるかどうか疑義があろうが、我が国において半世紀以上も運用され続け、

そして、(それは単なる運が良いだけであったとしても、または形式的であれ)、我が国は、国際紛争を解決する手段としての戦争はしなかったという、

―― どえらい実績がある

とは、言えるんではないでしょうか。

まあ、同盟国(米国ですが)の戦争を山ほど手伝っていますし(朝鮮戦争から湾岸戦争、そしてその後も)、日米安保条約がなければ、とっくに他の国に占領されていただろうなぁ、と、私ですら思います。

だから、「平和憲法が、平和をもたらしてくれた」とは、直接的には言えないことも、よく分かってはいます。

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憲法第9条2項の改正は、法治国家としての対応としては、確かに正しいと思う。

しかし、その改正をしないことによって、ぼんやりとしたものであっても、私達の過去の反省が伝わり、誰かが安心し、我が国としてのの誠意が、届けられるのであれば、

沢山のバンドエイドやら、包帯やらを巻きつけながら、ゼーゼーいいながら、なんとか存在していたとしても、

憲法第9条2項は、「そのままでも、いいよ」と、言ってくれるのではないか、と、

私は、そう思いたいのです。

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「憲法第9条2項の改正は必須だ、もう我々は待てない」という方に対して、私ができることは、お願いをすることくらいです。

あと、20年ちょいくらい、待って貰えませんか(もっと早いかもしれません)

私は、「『嘘つき』ではない人生を生きた」と、これまで出会って話をしてきたアジアの人に、言いたいのです。

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だめ? そんなに長くは待てないですか?

じゃあ、あと数年、いや2年でもいいです。

「背負っている赤ちゃんってね、死ぬといきなり重くなるんだよ」と言った母に、

「戦後、あなたたちは、この国の平和憲法を立派に守りきったのだ」と語りかけて ―― 送ってやりたいのです。

2013,江端さんの忘備録

法律はその一文一句に至るまで、きちんとした理由付けがされていることを知ったのは、特許法の勉強を始めてからのことです。
■この法律のこの条文の趣旨は何か。
■そして、この法律のこの条文ができしまうと、誰の利益になり、誰の不利益になるか。
■さらに、この条文は、正義やロジックを含めた社会通念上、妥当と言えるか。そして、国際的な潮流とマッチしているか。
■これらを全体的に考慮すると、この条文制定することは「我が国の国民に利益がある」と言える。
という、論理付けが、全ての法律の、全ての条文の、全ての一句に至るまで、かっちり作られている ―― それを知った時に、
「まあ、なんとまあ、『法律を作る』ということは、大変な作業なのだろう」と、驚いたことを覚えています。
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例えば、「特許法第17条の2(補正)」を挙げてみるとこんな感じになります。
■特許出願を、出願後に補正、つまり「修正する」ことは、あとから別の発明を「追加」できることになるから、ダメ。
■でも、我が国の特許権は「早い者勝ち(先願主義)」を採用しているから、「全部ダメ」とすると、発明者が「かわいそう」すぎる。
■でも、「無制限」に、何回でも修正することを許すと、特許庁も「ダルい」し、権利内容が後からコロコロ変ると他の人にも迷惑がかかる。
■という訳で、本条では、補正できる「範囲」と「時期」をきっちり決めて、出願人も、特許庁も、他の人も、「ま、いいか」と言える範囲の補正だけ許すことにするよ。
という感じの理由づけが、ちゃんと記載されています。
この他、スポーツのルール、校則、社内規則、なんでも良いのですが、それらには、必ず、誰が見ても「なるほど、そういうことか」と納得できるだけの理由が必要なのです。
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今朝、嫁さんに車で駅まで送って貰った時のことです。娘(長女)の学校の前を通り直ぎるときに、嫁さんが言いました。
嫁さん:「お、手を繋いで、校門にかけこんでいるカップルだよ。珍しいなぁ」
実際に珍しいのです。
娘の通っている中学は、男子と女子の建屋が分離している共学なのです(正直、その制度趣旨が、私には、よー分からんのですが)。
私:「この学校って『男女交際禁止』の校則があったけ」
嫁さん:「ないよ」
私:「ま、そうだよね。今時、そんな・・」
嫁さん:「あ、でもね。娘(長女)の所属している演劇部は『部内恋愛禁止』なんだって」
私:「はぁ?なんじゃ、そりゃ? その理由は?」
嫁さん:「面倒くさいことになるから」
私:「・・・?」
嫁さん:「演劇部の中で、恋愛トラブル起こされたら、当事者は勿論、他の部員の演技にも影響が出て、『面倒くさいことになるから』だって」
私:「はあ、確かになぁ。運動部や他の文化部ならともかく、演劇部の活動において、人間関係のギクシャクは、演技に対して、決定的に致命的と言えるな」
嫁さん:「逆に、演劇部員以外との恋愛はどーでも良い、となっているらしいよ」
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こういう「恋愛禁止令」であれば、理系の法学初学のエンジニアでも、とても分かりやすくて、良いです。

2013,江端さんの忘備録

私が、リュックを背負って、アジアを歩き回っていた時のことです(「バックパッカー」と言われていました)。

バックパッカーの旅行者と一緒に、タイのバンコクを回っていた時、彼の仲間との待ち合わせに付きあったことがあります。

しかし、所定の時間になっても、その仲間は姿を現わしませんでした。このような旅では、よくあることでした。

しかし、その待ち合わせでは、確か「帰国フライトのチケット」の手渡しという重要な内容で、下手すると、彼は、帰国する手段を失うかもしれないという事態でした。

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私が驚いたのは、その後です。

「必ず何かのメッセージを残しているはずだ」と言いながら、彼はその周辺を探し出して、電柱から飛び出している針金に引っかかっている紙を見つけました。

「お、これだ、これだ」

その紙には、『落ち合う時間と場所の変更』を記載した手書きの文章が記載されていました。

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携帯電話もメールもない時代、ましてや海外における連絡手段が絶無であった時代において、

我々、海外一人旅の旅行者は、ほとんどこのような、―― 現代にあっては信じられないような原始的な方法で ―― 海外の旅を生き延びていたのです。

2013,江端さんの忘備録

海外で生活した人は、口を揃えて「日本の運行ダイヤの緻密さ、正確さ」を褒め称えます。

列車運行管理システムは、もとい、我が国が誇る、最高傑作の作品です。

その最高作品ですら、コントロールできないのだから、仕方がないのだ、

―― と、言い聞かせないと「切れそう」な自分を感じています。

なんで、30分の余裕を見て、なお、重要な会議に「遅着の連絡」を入れなければならないのだ。

なんで、私の出張の日の、その時間をピンポイントとして、人身事故が起きるのだ。

と。

私も、「自分だけに都合の悪いことが起っているという思い込みは、錯覚である」ということは、判っているのですが。

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文明国の所業にあるまじき非道であり、人権の観点からも許されざる行為であり、

人道上も、倫理上も、衛生上も、なにより、列車運行の安全上、大問題であることは分かっていますが ――

『人身事故で、バラバラになった遺体の破片を終日放置したまま、通常運転を強行する』

なんか、そういう現実と対峙したくなるなぁ、という想いを抑えられないことがあります。

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昔、ラジオ番組で聞いたことがあるのですが、高校生が、警察にお願いして、飛び込み自殺の現場写真を貸与して貰い、それを文化祭で展示したことがあったそうです。

もちろん、極めて真面目な自殺問題に対する取り組みの一貫として、です。

「凄いことを企画する高校生がいるもんだなぁ」とびっくりしたので、よく覚えています。

もの凄い反響があったようで、良い意味での自殺への「幻想破壊」がされた、ということのようです。

でも、今同じことをして、同じような効果が得られるか 私には判断つきかねます。

そのようなコンテンツは比較的簡単に入手できるようになってしまったからです。

それでもなお、私は、世の中にある、現実を、文学でも、絵画でも、写真でもなく、五感のリアルで感じ取ることを、―― それが、心に酷い怪我をさせることになったとしても ―― 必要ではないか、と思っています。

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例えば、「死刑執行の立ち会い制度」などは、その運用に関しては、まず死刑囚の同意を絶対的条件として、何重ものチェックや審査を行ったとしても、国民に開示する制度を用意すべきではないかと考えます。

我が国の国民の多数が「是」としている制度なのですから、その制度の実施状況を、国民自身でチェックできないというのは、やっぱり変だと思うのです。

その結果で、死刑制度の「是」が強化されても、「非」に転換が図られても、それは、どちらでも良いと思うのです。

法律は国民の合意で成立されているものなのですから、その運用を国民はチェックする権利と義務があると思うのです。

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「そんな厳しい場面に対峙したくないし、そもそも、私には、そのような場面に係わることは一生ないはずだ」という方もいると思います。

それは、また、その通りだと思います。

私は、私達の全てが世の中の森羅万象に対峙して敢然と立つ必要があるとは、思っていません。

見たくないものは、目を瞑って通り過ぎる、で十分です。

ただ、現在の所、回避する可能性が絶無である「死」についてだけは、そろそろ直面する時代ではないかなぁ、とも思っています。

まあ、たまたま、今私が、そういう立場に立っているだけ、ということかもしれませんが。

2013,江端さんの忘備録

東京都議会選挙の結果は、どうでも良いのですが、その投票率を見て愕然としました。

"30%"に達していない。

このことをもって、「未来を放棄している」と非難するのは簡単ですが、有権者にも言い分はあります。

「お前たち(立候補者、各政党)の言っていることは、分からん」

起きている時間の大半を、政治的な活動をしている政治家たちと違って、有権者である私達は、日々仕事や育児、子どもの教育などで、毎日忙しいのです。

候補者が投票して欲しいのであれば、政治について考える時間が「一日5分以下」の我々に向けた「プレゼンテーション」を考えろ、ということです。

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この「プレゼンテーション」で一番効率的なやり方は、「経済効果」です。

「経済効果」は、「一日5分以下」どころか、「一日の時間のほぼ全部の時間」に対するアピールになるからです。

「経済効果」とは、詰るところ「金」です。

原発問題でも、高齢者福祉問題でも、少子化問題でも、若者の就労問題でも、全部「金額」に換算して計算すれば助かるのですけどね。

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そうなると、有権者側にも、金額に対するスケール感が必要になります。

これは「教育」が担当する範囲になります。

例えば、・・・

と書き出してから、ちょっと国家予算について、調べてみたのですが、これが良く分からんのです。

一般会計とか特別会計とか、ぐちゃぐちゃで、一度、自分で理解してみないと、とても、書けそうにありません(ので、また別の機会に)。

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前にも書きましたが、娘たちには、「国家に関する金であれば、とにかく、1億(人分)で割ってみろ」とは言っています。

■日本のGDPが、だいたい500兆円だから、国民一人あたりが稼いでいるとみなせるお金は、年間500万円

■日本の国債発行残高が、だいたい1000兆円だから、国民一人あたりの借金は1000万円

■「宇宙兄弟」で有名になった、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の3,390億円は、国民一人あたりの負担でいうと、年間3390円くらい、―― 映画館に年2回いく位の感じ。

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街頭演説は、「あなたの財布から○○円貰います」「でも△△の為に有効に使います」と、数値で語れ。

政治に関しても、いつまでも、「1円、2円、3円、・・・たくさん」では、立候補者も有権者も、恥かしい。