こぼれネット

そこで提案ですが、いっそうのこと「私(江端)を信じてワクチン打ってみませんか?」

母の葬儀が終った翌日、シバタ先生と私の共著によるコラムを読んで頂いている方から、3週間近くも前にメールを頂いていることに気がつきました(削除フォルダに入っているのを見つけました)。

新型コロナワクチン接種について、複雑な条件(体調、持病)を抱えていらっしゃって、深くお悩みであるという状況がある、ということがよく理解できる内容でしたので、その日の夜にお返事を致しました。

私のメールの部分のみを公開致します。

江端智一

1月13日(木) 22:35 (2 日前)

お返事が遅れまして、誠に申し訳ありませんでした。

ご質問に関しまして、私の個人的見解を申し上げたいと思います。

(1)ブレインフォグにつきまして

この話をシバタ医師から頂いたとき、私は勿論EE Times Japan編集部も相当な衝撃を受けました。これは「感染すれば、発病(軽度の発熱、重篤、死)に至らなくても、体に障害を与えるという話だからですらです。

ブレインフォグが確定的な事実であれば、無症状感染になりやすい子どもたちを、今、現在進行形で攻撃しているはずで、ゆゆしき問題です。ただ、無症状感染は、当然のことながら研究対象となりいくいため、学会でも十分に研究されておらず、世間には出にくいという問題もあります。

何年か後に、私達は、『接種を最優先すべきだったのは子供だった』という後悔を歴史に残す恐れがあるかもしれません。

「ブレインフォグ」という言葉自体が、あまり知られていませんが、一応、罹患後の患者の後遺症の話を聞くと、まずまず事実と認定できるのではないかと、私は考えております。

(2)ワクチンに関する恐怖について

従来のワクチンは、実際の病原菌を無毒化したものを投入するものですが、mRNAワクチンの本体は、本当に適当な塩基配列であり、スパイクタンパク質(外面)だけを、本物にみたたハリボテですので、

『絶対的な意味において、mRNAワクチンによって新型コロナに感染することはできません。不可能です』

問題は、ハリボテを本物と勘違いして攻撃をする私達の抗体反応の方です。これが、あまりに過激な攻撃活動をするので、それが副反応(高熱等)として私達の体に表われてしまうのです。

私の母は、第一回のコロナ接種後に、肺水症を引き起こして入院しましたが、これは「新型コロナウイルス」が原因ではなく、「母の免疫機能」が、眠ったままでいた持病を活性化させてしまったからだと思っております(その母も、3日前に永眠しましたが、これもコロナとは関係のない誤嚥性肺炎に伴う衰弱死でした)。

ワクチンによって新型コロナに感染することはないですが、抗体の過激活動が飛び火して、体の病理を活性化させる可能性までは、私は否定できません(というか、むしろ肯定します)。

ですので、『休眠状態の持病を持っている人は、ワクチン接種が持病を活性化させるかもしれないので、止めた方がいい』と、私は他の人に進言しています。

ただ、これは「どの休眠状態の病状が発火するか」が、実際にワクチンを打ってみないと分からないところに、この問題のいやらしさ/難しさがあります

ですので、ワクチン(ファイザーとモデルナのmRNAワクチン)によってコロナになるという心配は、全くの杞憂ですが、その抗体反応によって「いらんことが起きる」という可能性までは、私は否定できないのです。

と、まあ、仕組みの話としては、これくらいにして、あとは数字(確率)の話をします。

昨年の冬、我が国は、これまで日本中の学校を学級閉鎖に追い込んできたインフルエンザを完全制圧しました(発病者を1/1000以下にした)。

しかし、そのような完全に近い公衆衛生社会において、コロナウイルスは、1週間の感染率が6日間で2~3倍になる勢いの感染力を持ちます。

ですので、私の単純なかけ算の計算では、インフルエンザウイルスと比較して、コロナウイスルの感染率は、約10000倍あり、死亡率(これは、私が退院できなかった人から計算したのですが)は20~40倍あります。

つまり超単純な計算で、インフルエンザと比較した場合のコロナの危険性は、20万倍から40万倍ということになります(ちょっと計算が乱暴に過ぎますが)。

私の場合、この20万倍から40万倍の危険性に対して、アナフラキシーの発生率は0.00005という、驚異的な少数です。そういう訳で、私は『圧倒的にワクチン接種の方が美味しい』という結論に至りました。で、私は「喜んでワクチン接種に出かけに行った」という次第です。

ただ、これは、あくまで、数理研究員のビジョンであって、他の方に押し付けられるものでもありませんし、理解して貰えるものでもないと思っています

つまるところ「怖いものは怖い」が正しくて、それで良いのです。

「怖い」はロジックではありませんし、事実ロジックで安易な数値を振り回すことで、酷い目にあってきました。例えば、福島原発(を含む日本国の原発)は、研究者の叩き出した数値から「原発の安全神話」ができてしまって、私達日本人は、それで酷い目に合わされました

さらに、新型コロナワクチンは、「自己責任が取れる」珍しい対象です。他人に感染を移さない生活をしているかぎり、自分の「怖い」を最優先して頂いて全く問題ないと思います。

(3)お子さんへのワクチン接種について

しかしながら、お子さんは、自己責任の対象外であり、保護者は子供の命を守る義務があります。子供への症状のある感染はレアケースですし、死亡例は(現時点では)絶無に近いです(ただし、数は少数ですが世界で死亡している子どもはいます)

実際、私も「ブレインフォグ」の話がでてくるまでは、『子どもは、自然感染に任せてほっとけ』と思っていた一人です。

ただ、(前述した様に)無症状感染での体組織破壊の話(ブレインフォグ)の話を聞いて、私は青くなりました。

お子さんが、持病または、休眠状態の疾患を持っていないのであれば、年齢が若いほど、ワクチンの副反応の影響は出にくいと思います(逆に、発熱等は大人よりも激しいかもしれませんが)。

結論として、現時点での私の持ちうる全ての知識を動員した上での結論を申し上げるのであれば、「お子さんへのワクチン接種をお勧めします」。

5年後、10年後、『この子どもへのワクチン接種は、殺人行為だった』と言われる可能性を、私は否定はしません。ただ、今の、現時点の世界と私の持っている知識では『ワクチン接種は、子どもこそが、もっとも安全である』と考えています。

また、世界中にあるウイルス性の病気で根絶できたものは、たったの一つしかないことを考えると、これからも世界は、コロナウイルスとともに生きていくしかありません。

何十年もずっとワクチンを回避しながら、無感染のまま生き続けるのは、無理じゃないかなぁ、と思っています。

とは言え、「自分は接種しないのに、子どもに接種させる」ということが、どれほど心理的に重いものであるのかは、想像に難くありません。ただ、重いながらも、その判断を、(多くの人には理解して貰えないかもしれませんが、少なくとも私は)合理的で倫理的な判断であると断言します。

シバタ医師のような病理医学に詳しい方や、私のような数理研究者であれば割り切れるロジックが、多くの人には通用しないことはよく分かっています。

つまるところ、接種する/しないのいずれの選択もイバラの道です。それでも、私達は、明日の自分と子ども達のために、選択をしなればならないのです。

(4)すでにコロナ感染したのにワクチン接種をする必要があるのか、について

私もこの辺のことは分かっていませんが、感染後の後遺症の改善にワクチン接種に効果があったことは、医学論文等で発表されておりますので、その点では接種には意義があると思います。

ただ、正直、私にもその理由がよく分からないのですが、残存したコロナウイルスが固体内で変異して、小規模な攻撃を続けているとしたら(この仮説には無理があると、私ですら思うのですが、このコロナウイスルに関しては、従来のウイルスの動きでは説明できないことが多いのです)、効果があるのは自然なことだと思います。

また、ワクチン接種した方が、中和抗体の量が多くなるという厚生労働省の発表もあります。この事実も私には、やっぱり???とは思うのですが、これはデータが示している事実です。

この事実は、生ワクチンよりも、コンピュータで計算した(mRNA)ワクチンの方が優れている、ということになります(それはそれで、ITエンジニアとしては嬉しかったりするのですが)。

ただ上記の『???』については、変異株になる度に感染している人がいることや、ブレークルー感染の多発の状況と鑑みれば、一応筋は通るかなぁ、とは思っています。

従前のウイルスと、コロナウイルスは、分けて考えた方が良いかもしれないと思います。

結論として、本件は「『感染してもワクチン接種した方がいいようだ』と、データが語っている」という話になると思います、

(5)「私(江端)を信じてワクチン打ってみませんか?」

かなりハードルが高いのですが、私がお勧めするのは、『誰の意見も聞かずに、新型コロナウイルスとワクチンについて、自力で調べて理解をして判断をする』です。人の意見では、不安になるだけですし、人の意見では、最悪の結果に対して、その人を責めるだけではなく、自分自身を責めることになります。

しかし『それができないから困っているんだ』と言う声が聞こえてきそうです。実際、ウイルスやワクチンの内容は難しいのです。私もシバタ先生のレポートを解釈するのに、想像を絶するほど勉強して、今、ここに「開き直った私がいる」という状況です。

そこで提案ですが、いっそうのこと「私(江端)を信じてワクチン打ってみませんか?」

それで、お子さんに不幸が見舞われたら、私を訴えて、呪って、私の生きてる限り非難し続けて、必要なら私に復讐(殺害を含む)して頂いても結構です。さらに、その事件の裁判ではこのメールを証拠として提出して頂き、さらには全世界にこのメールをばらまいて頂いても結構です。

SNSなどを見ていると『私のコラムを読んで、ワクチン接種を決断した』という人が、日本には少なからずいるようです。私は、「その人達をそそのかした当事者として、断罪される」覚悟があります。

多分、世界中のお医者さんは誰も「絶対大丈夫」とは言ってくれないと思います。

「江端を信じる」というのは、本当に最後の、しかも、あまり懸命とは言えないジャッジかもしれません(最悪のチョイスかも)。しかし、もしそれで、あなたの苦しい状況が改善されるなら、私を自由に使って頂いて結構です。

長文になりましたが、貴方のご判断の材料になれば幸いかと存じます。

江端智一

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