Fuzzy推論は、ルール間に矛盾が生じていたとしても、メンバーシップ関数の重みを使って、ルール全体を俯瞰した推論をしてくれます。
ルール全体の並列処理ができる点では、Fuzzy推論は人間の心理を計算するのに非常に有効だと思います。
しかし、近年、Fuzzy推論を使う人間心理を現わす研究が見られないように思います。
これは私の誤認でしょうか?あるいは代替の推論方法があれば、それを教えて下さい
短く言うと――「最近は“心理学そのもの”の主流では、Fuzzy単体は目立ちにくい」が実態です。ただし消えたわけではなく、感情認識・運転行動・医療や参加型調査(FCM)などでは現役+進化形(type-2、neuro-fuzzy)が使われています。深層学習やベイズ系・RL系の台頭で“心理プロセスの定量化”は別手法が主役になった、というのが全体像です。(サイエンスダイレクト)
いま使われている(または復権している)代替アプローチ
- ベイズ階層認知モデリング:個人差を統計的に織り込み、理論パラメータの不確実性を一貫して推定。心理学の量的理論検証の“定番”。(PMC)
- 強化学習(RL)/逆強化学習:価値学習・意思決定を説明し、社会・感情神経科学でも急増。深層RLも導入。(PMC)
- 証拠蓄積モデル(DDMなど):選択と反応時間を同時に説明する意思決定プロセスモデル。(PMC)
- 深層学習ベースの感情認識:音声・表情・生体信号の多モーダルで主流に。(サイエンスダイレクト)
- Fuzzyの進化形:Type-2 FLS(ラベルの曖昧さまで表現)、Neuro-Fuzzy(学習可能なFuzzy層)。心理・行動の不確実性処理で価値が残る。(サイエンスダイレクト)
- Fuzzy Cognitive Maps(FCM):人がもつ因果認識の可視化・合意形成に強く、医療や参加型研究で利用が続く。(PMC)
なぜ“見かけ上”減ったように見えるか
- トップ心理学誌では、可搬な理論パラメータ・厳密な不確実性表現(ベイズ)やタスク適合の良い過程モデル(DDM)、データ駆動の高精度(深層学習/RL)が主流化。Fuzzyは工学・応用領域側に寄ったため、文献探索範囲によっては希薄に見えます。(PMC)
それでもFuzzy(含むType-2/Neuro-Fuzzy)を選ぶ場面
- ルールの可読性が最優先(「もし~なら~」で説明責任が必要)。
- 小規模データ+専門家知識を正面から使いたい。
- 言語ラベル自体が曖昧(“やや不安”“少し怒り”など)で、ラベル不確実性まで扱いたい。(サイエンスダイレクト)
まとめ
誤認ではありません。心理学の中心トレンドはベイズ/RL/証拠蓄積/深層学習へ移っています。一方で、Fuzzyは「人の言語的ルールや合意形成を可視化したい」「曖昧さを説明可能に処理したい」場面で今も有効で、進化形(type-2・neuro-fuzzy・FCM)として残っています。(サイエンスダイレクト)
必要なら、あなたの対象データと目的(説明責任/予測精度/パラメトリック推論)に合わせて、最小実装の雛形(Fuzzy・ベイズ階層・DDM・RL)を並走比較できる実験設計をそのまま書き起こします。
私はマルチエージェントシミュレーションのエージェントの心理モデルにFuzzy推論を用いることが多いです(ラクですしね)。
これを別の手段に置き換える場合、どのような手法を取れば良いでしょうか。
具体例で説明頂ければ助かります。
なるほど、ご自身のMASにおける「心理モデル」をFuzzy推論から他方式に置き換えるケースですね。置き換え先は「(1)ルールベース性を残したいか」「(2)学習でパラメータを得たいか」「(3)人間心理をどう近似したいか」で選び分けると整理しやすいです。以下に具体例を示します。
1. ベイズ意思決定モデル
考え方: 「エージェントが環境から観測した情報を確率的に解釈し、行動を選択する」という枠組み。
具体例:
- 住民エージェントが「バスを使うか徒歩にするか」を判断する場面で、Fuzzyなら「雨が強い AND 距離が長い → バス利用確率高」とルール化。
- ベイズモデルにすると「事前に観測された統計(雨天時の利用確率、距離ごとの利用確率)」を尤度関数として組み込み、逐次的に更新。結果として「信頼区間付きの確率選択」が得られる。
→ 特徴: Fuzzyより統計的厳密性が高く、結果に不確実性を明示できる。
2. 強化学習(RL)
考え方: 報酬最大化を目標に行動を学習する。心理を「経験から学習する適応」とみなす。
具体例:
- 商店街を歩くエージェントが「コンビニに寄る/直進する」を学習。
- Fuzzyなら「空腹度=高 AND 所持金=多 → 寄る」など。
- RLなら「寄った場合に満腹になり満足度+5」「時間消費で−2」という報酬を定義し、試行錯誤から「空腹時に寄る」行動が自然に学習される。
→ 特徴: 動的環境での適応が強み。心理というより「行動選択の学習過程」を再現。
3. 証拠蓄積モデル(ドリフト拡散モデル: DDM)
考え方: 「選択肢間の比較を徐々に進め、一定閾値に達したら決断する」心理モデル。
具体例:
- エージェントが「バス停まで歩く/タクシーを呼ぶ」を迷う場面。
- 内部で「コストに対する不満」や「快適さへの期待」といった証拠が少しずつ積み上がり、閾値を超えた時点で意思決定。
- Fuzzyなら「距離が短いなら徒歩」と一発で決まるが、DDMでは「決断に時間がかかる」「迷いが生じる」といった現象も表現可能。
→ 特徴: 反応時間や「迷い」をモデル化でき、人間らしさが増す。
4. Neuro-Fuzzy(ハイブリッド)
考え方: Fuzzyルールを残しつつ、パラメータ(メンバーシップ関数や重み)をニューラルネットで自動学習。
具体例:
- エージェントの「不安度」の三角形メンバーシップを、調査データから最適化。
- 手書きルールを残しつつ「心理ラベル」の曖昧さを学習で調整できる。
→ 特徴: Fuzzyの直感性とデータ駆動の精度を両立。
まとめ
- 説明責任を重視 → ベイズ推論
- 行動適応を重視 → 強化学習
- 人間らしい「迷い・決断過程」を重視 → 証拠蓄積モデル
- Fuzzyの良さを残しつつ学習性も欲しい → Neuro-Fuzzy
上記の方式は、それなりの有意な数のデータが必要になると思います。
現実にはデータが全く存在しないという場合があります。
このような場合でも使えるものがありますか?
はい、その通りです。ベイズや強化学習などのデータ駆動型は「数がないと動かない」ことが多いですが、ゼロデータ環境でも扱える手法はいくつかあります。以下、具体例で整理します。
1. 専門家知識ベース方式
概要: 調査データがなくても、専門家の知識や直感を形式化して心理モデルに落とし込む。
- 例: 「雨の日は人は出歩きにくい」「高齢者は長距離を避ける」などをルールとして書く。
- Fuzzyルールがまさにこれに強い(理由:少数の言語的ルールで動かせる)。
- 代替としては Fuzzy Cognitive Maps (FCM)。ノードを「不安」「コスト」「快適さ」にして、矢印で因果関係(強弱付き)を描く。専門家が因果の方向と強さを設定するだけで動く。
2. シナリオ・パラメトリック方式
概要: データがないなら「想定シナリオ」を直接パラメータ化してしまう。
- 例: 「もし住民が保守的なら → 新しい交通手段は導入直後は20%しか利用しない」といった仮定を直接パラメータに。
- ベイズモデルでも、事前分布を「強い仮定」として置けば動く(データゼロでもシミュレーションは可能)。
3. 認知アーキテクチャ方式
概要: 人間認知を一般化した理論(ACT-R、Soarなど)をMASに埋め込む。
- 例: ACT-Rなら「ワーキングメモリに保持できる選択肢は3つまで」という心理学的制約をそのまま適用。
- 実データがなくても「理論で得られた普遍的仮定」で動かせる。
4. ルール探索/進化的最適化
概要: ルールや閾値を遺伝的アルゴリズム(GA)や進化計算で「環境にフィットする」ように自動生成。
- 例: 「乗合タクシー利用率が一定水準に達する」ことを目的関数にし、ルールの閾値を進化計算で探索。
- 実データがなくても「期待するマクロ現象」さえ与えれば、個々の心理ルールを進化させられる。
まとめ
- ゼロデータ環境でも使えるのは、
- Fuzzy / FCM(知識ベース)
- ベイズの事前分布固定(シナリオ駆動)
- 認知アーキテクチャ(理論駆動)
- 進化的最適化(望ましい集団挙動に合わせる)
江端さんのケースだと「住民調査のないシナリオ」も多いと思うのですが、そういう時は 専門家知識ベース(FuzzyやFCM)+シナリオパラメータ がいちばん実用的です。
質問ですが――MASで「心理ゼロデータ」を扱うとき、江端さんは 調査票なしの完全空白を埋めたいのか、それとも 部分的なインタビューや常識的知見を数値化したいのか、どちらに近いですか?
両方です。
私たちは自分の有する常識だけでも、かなりの部分の他人の振る舞いを代替できるはずです。
そういう意味では、調査票なしでエージェントの心理は作れると思いますが、補助的にインタビューやアンケートがあればさらに高度な心理モデルが作れるとは思います。
しかし、大抵のインタビューやアンケートの数は「しょぼい」です。
(1)自分の常識だけで心理モデルを作る場合と、
(2)前記(1)にショボいインタビューやアンケート結果を使う場合の
この2つの場合についてそれぞれについて論じて下さい。
承知しました。「常識だけで作る」場合と「常識+ショボい調査を補助的に使う」場合、それぞれでどう心理モデルを構築するかを整理します。
(1) 常識だけで心理モデルを作る場合
アプローチ
- ルールベース/Fuzzyルール
自分の知識・経験則を言語ルールとして直接落とし込む。
例: 「雨の日 AND 高齢 → 外出確率低下」「若年 AND 夕方 → コンビニ立ち寄り確率増」 - Fuzzy Cognitive Maps (FCM)
「コスト」「快適さ」「不安」「時間制約」など心理要因をノード化し、それぞれを因果矢印でつなぐ。因果強度を自分の感覚で −1.0〜+1.0 の値に割り当てる。
メリット
- データがゼロでもすぐ動かせる。
- ルールや因果関係が明示的で「説明責任」が果たせる。
注意点
- 主観が強く入るので「再現性」「他者からの納得性」が弱い。
- シナリオごとに結果が変動しやすく、パラメータチューニングに時間がかかる。
(2) 常識+ショボいインタビューやアンケートを使う場合
アプローチ
- ルールベースの初期設定を常識で作成 → パラメータ補正を調査で行う
例: 常識で「高齢者は外出頻度が少ない」と設定 → アンケートで「70歳代でも散歩は毎日」という回答があれば、外出確率を+0.2補正。 - ベイズ的な利用
常識を「事前分布」として設定し、少数データを「尤度」で更新。サンプルが少なくても「常識ベース」から大きく逸脱しない推定が可能。 - パラメータ重み付け
調査数が少ない場合は「常識ルール: 70%」「調査データ: 30%」のように加重平均を取る。
メリット
- 常識だけでは見落とす「局所的な行動傾向」を補足できる。
- データが少なくても、常識とのハイブリッドで「妥当性」を維持しやすい。
注意点
- サンプル数が少ない調査は「外れ値」に大きく振り回される。必ず常識と混ぜることが前提。
- 「調査の声をどの程度信じるか」という重み付けを明示的にしておく必要がある。
まとめ
- (1) 常識だけ → FuzzyルールやFCMで「ゼロデータでも即運用」可能。ただし主観の強さに留意。
- (2) 常識+ショボい調査 → 常識を基盤にして、調査は補正パラメータとして扱う。ベイズ的更新や重み付けで「過信しない」仕組みを入れるのが鍵。
江端さんのケースだと、(1)をベースに動かしつつ、(2)を随時上乗せして精度を調整する「逐次改訂型モデル」が一番現実的だと思います。
ここで質問なのですが――江端さんのMASにおける「心理モデル」の役割は、住民行動の“確率分布を与えること” が中心ですか?それとも 個別エージェントの“性格をシナリオ的に描き出すこと” に近いですか?
Fuzzy Cognitive Maps (FCM)について教えて下さい。
Fuzzy Cognitive Maps(FCM)は、人間の頭の中の「因果関係の地図」を数値モデル化したものです。ファジィ理論とグラフ構造を組み合わせた手法で、心理や社会システムのように「曖昧で複雑な要因が相互作用する状況」を表現するのに向いています。
基本構造
- ノード:概念や要因を表す(例:「不安」「コスト」「快適さ」「外出意欲」)。
- エッジ(矢印):因果関係を表す。
- 正の値:一方が増えると他方も増える(例:「快適さ↑ → 外出意欲↑」)。
- 負の値:一方が増えると他方が減る(例:「不安↑ → 外出意欲↓」)。
- 重み:因果の強さを -1.0〜+1.0 の範囲で表す。
動作の仕組み
- 初期状態として各ノードの値を設定(例:あるエージェントの「不安=0.6」「快適さ=0.3」など)。
- エッジの重みに従って、ノード間で値が伝播。
- 何ステップか繰り返すことで、全体の状態が収束したり、振動したり、シナリオごとに異なる挙動を示す。
具体例(MASに応用)
シナリオ:住民が「出かけるか家にとどまるか」を判断
- ノード: 「天候」「不安」「コスト」「快適さ」「外出意欲」
- エッジ例:
- 天候(雨) → 不安(+0.7)
- コスト(交通費高) → 外出意欲(-0.5)
- 快適さ(娯楽の魅力) → 外出意欲(+0.8)
- エージェントごとに「快適さ」や「不安」の初期値を変えると、多様な意思決定が自然に再現される。
利点
- 直感的に作れる(紙に因果関係を書き出す感覚でモデル化)。
- データゼロでも動く(重みは専門家の知識や常識で設定可能)。
- シミュレーションに強い(ノード数十〜数百でも動かせる)。
- 説明可能性が高い(なぜその行動になったか、因果経路が追える)。
注意点
- 重みの設定が主観的になりやすい。
- 結果の「定量的な正しさ」を保証するのは難しい(相対比較やシナリオ比較には強い)。
- 安定性(収束・発散)が重みの選び方に大きく依存する。
まとめ
FCMは「心理を因果関係のネットワークとして表す」方法で、常識や小規模調査をそのまま数値モデルにできる点が強みです。Fuzzyルールよりも「要因間の相互作用」を表すのに向いており、MASに組み込むと「住民心理の連鎖的な変化」を再現できます。
江端さんのように MAS に心理モデルを入れる場合、「個人の心理ルールはFuzzy、集団的な因果構造はFCM」 といった使い分けも可能ですが、こちらにご関心ありますか?
「個人の心理ルールはFuzzy、集団的な因果構造はFCM」という傾向があるのですか?
はい、研究の流れや実務応用の事例を見ると、実際にそのような棲み分けが見られます。理由を整理するとこうなります。
1. 個人レベルにFuzzyが向く理由
- ルールの直接性
個人の心理は「もし~なら~」の形で表現しやすい。Fuzzyルールは「疲労が高い AND 天気が悪い → 外出意欲が低い」といった単純ルールで十分機能する。 - 説明のしやすさ
エージェントごとに「なぜそう行動したか」を人間に説明可能。特にMASでは個体差を出すために有効。 - データが少なくても動かせる
常識的なルールだけで初期化できる。
2. 集団レベルにFCMが向く理由
- 要因の連鎖と相互作用を表せる
集団の心理や社会全体の傾向は「不安が増えると外出が減り、商店街の活気が落ち、さらに不安が増す」といった循環関係が支配的。これはルールベースより因果ネットワークで自然に表現できる。 - 政策や介入の効果を見やすい
「公共交通を改善 → 快適さ↑ → 外出意欲↑ → 経済活性化↑」のような因果連鎖を政策評価に使える。 - 専門家・住民の知識を統合できる
参加型ワークショップで「どの要因が効いているか」を住民と一緒に描ける。
3. 実際の応用傾向
- 個人心理モデル = Fuzzyルール or Neuro-Fuzzy
→ エージェント単位で「曖昧な意思決定」を再現。 - 集団モデル = FCM
→ 社会的ダイナミクスや政策効果を評価。特に医療・交通・地域計画の分野で利用。
まとめ
「個人=Fuzzy」「集団=FCM」は必ずしも絶対的なルールではありませんが、
- 個の意思決定はルールがシンプルで説明的なFuzzy、
- 群の相互作用や政策シナリオは因果構造を扱えるFCM、
という棲み分けはかなり自然で、研究・実務の現場でもそうした使い分けが見られます。
江端さんのMASに組み込む場合、エージェント心理をFuzzyで定義した上で、集団的影響(社会的雰囲気や地域全体の活気)をFCMで重ねる二層モデルが有効かと思います。
👉 江端さんがイメージされているMASは、**「個の集合が群を形づくる」方向ですか?それとも「集団的雰囲気が個にフィードバックする」**方向ですか?
Neuro-Fuzzyについて説明して下さい
Neuro-Fuzzy(ニューロ・ファジィ)は、ファジィ推論システム(Fuzzy Inference System, FIS) に ニューラルネットワークの学習能力 を組み合わせたハイブリッド手法です。
基本の考え方
- Fuzzy推論
「もし〜なら〜」の形でルールを記述し、メンバーシップ関数で曖昧さを扱う。
→ 強み:人間にとって分かりやすく、説明可能。
→ 弱み:メンバーシップ関数やルールは人間が手作業で設計する必要がある。 - ニューラルネットワーク
データから自動でパラメータを学習する。
→ 強み:柔軟で学習能力が高い。
→ 弱み:内部がブラックボックスで、解釈性が低い。
Neuro-Fuzzyはこの両者を融合し、
- ルール形式の「解釈可能性」を維持しつつ、
- データから「自動調整・学習」を行う。
代表的な仕組み(例: ANFIS = Adaptive Neuro-Fuzzy Inference System)
- 入力層:数値データを受け取る。
- メンバーシップ層:ファジィ集合(例:「小さい」「大きい」)を表現。メンバーシップ関数の形状(幅や中心)がパラメータ化されている。
- ルール層:ファジィルール(例:「もし X が大きい AND Y が小さいなら Z は中くらい」)を表現。
- 出力層:ルールを統合して数値出力を計算。
- 学習:誤差逆伝播や最小二乗法で、メンバーシップ関数やルールのパラメータを更新。
応用例
- 制御工学:空調制御や自動車のシフト制御(従来Fuzzy制御を使っていた分野に、学習機能を追加)。
- 予測モデル:株価予測、交通需要予測。
- 心理・行動モデリング:アンケートや小規模調査データを基に、メンバーシップ関数を調整し、人間らしい判断を再現。
MAS(マルチエージェントシミュレーション)への応用
- 個人心理モデルにNeuro-Fuzzyを入れると、最初は「常識的なルール」で動かしつつ、
- 実験やアンケート結果を使ってメンバーシップ関数やルール重みを学習させることが可能。
- 例:
- 初期ルール: 「疲労が高い → 外出意欲が低い」
- 調査から「若年層は疲労に強い」ことが分かれば、Neuro-Fuzzyが自動的にそのメンバーシップ関数を調整。
メリットと注意点
- メリット
- 説明可能性(ルールが残る)
- データからの学習(主観ルールを修正できる)
- 注意点
- 学習にはそれなりのデータが必要。
- 複雑なルール構造になると可読性が下がる。
要するに、Neuro-Fuzzyは **「常識ベースの心理モデルを作った後、少数でも得られた調査データで自然にチューニングする」**のに向いています。
👉 江端さんのように「常識だけでもモデル化するが、ショボい調査も使いたい」ケースには最も適したアプローチの一つだと思います。
江端さんのMASの場合、心理モデルを **「そのまま固定」したいのか、「調査や結果に応じて少しずつ学習させたい」**のか、どちらに近いですか?
Neuro-Fuzzyをプログラムで理解したいです。
短いGo言語でサンプルを作成して頂けませんか?
以下は、Sugeno型(一次)ANFISの極小実装(2規則)です。
入力2変数
fi=pix+qiy+rif_i=p_ix+q_iy+r_i 。各規則はガウス型メンバーシップ(中心c・幅σ)×2、本体は一次回帰
勾配を解析的に出して確率的勾配降下で学習させます(データは簡単な回帰:
)。
使い方
-
go run main.go
-
学習の損失(loss)が徐々に下がり、最後にいくつかの点で target(真値) と pred(予測) が近づく様子が出力されます。
-
規則ごとのメンバーシップ中心C・幅Sと**一次係数(P,Q,R)**が学習後に表示されます。
実装の要点
-
規則数2の最小構成(増やすほど表現力↑)。
-
解析的勾配:
-
consequentは
∂y/∂pi=wˉix\partial y/\partial p_i = \bar w_i x等で直接更新。
-
premiseは
∂y/∂wi=(fi−y)/S\partial y/\partial w_i = (f_i - y)/SとガウスMFの微分を連鎖させて更新。
-
-
数値安定のため
SSσ\sigma と
を下限クランプ。
必要なら、
-
規則数の増加、
-
係数の正則化、
-
バッチ学習(最小二乗で consequent を解く)
などに拡張できます。
この骨格のまま**「常識で初期化 → ショボい調査で微調整」**という運用にも容易に適用可能です。
このプログラムが何をしているのか、何かの具体例で説明して頂けませんか
はい。ではこの Go版 Neuro-Fuzzy の最小サンプルが「実際に何をしているか」を、具体例に置き換えて説明します。
例:人の「満足度」を予測するモデル
「食事をした時の満足度」を、
- x = 辛さの度合い
- y = 価格の安さ
から予測するイメージで考えて下さい。
ステップ 1. ルールを用意
最初に、人間の常識的ルールを2つだけ用意します。
- ルール1:「辛さが弱くて、価格が安ければ → 満足度はある程度高い」
- ルール2:「辛さが強くて、価格が高ければ → 満足度は低め」
これをプログラムでは 2規則のFuzzyルール として表しています。
ステップ 2. メンバーシップ関数
「辛さが弱い/強い」「価格が安い/高い」を、ガウス関数(山型の曲線)で表します。
最初は適当に中心Cや幅σを決めますが、学習で自動的に調整されます。
ステップ 3. 具体的なデータで学習
本サンプルでは「真のターゲット」を sin(x)+cos(y) という数式にしています。
つまり「辛さと価格から満足度がこう決まる」という「真実の法則」が裏にある、という設定です。
プログラムはこの関数を「教師データ」として100点ほどサンプリングし、Neuro-Fuzzyがその関数を近似するように学習します。
ステップ 4. 学習の仕組み
- 各規則の線形モデル(p,q,r) は誤差逆伝播で更新。
- メンバーシップ関数の中心Cや幅S も同じく誤差から勾配を計算して更新。
- 繰り返すうちに「ルールの形」と「線形モデルのパラメータ」が調整され、
「辛さと価格を見たら、このくらいの満足度だろう」と予測できるようになります。
ステップ 5. 結果の確認
学習後に、未知の入力(例: x=0.5, y=-0.3)を与えると、
- ルール1とルール2の発火度合い(どのくらい当てはまるか)を計算し、
- それぞれの線形モデルで予測した値を混ぜ合わせ、
- 出力(pred)が真値(target = sin(0.5)+cos(-0.3))に近い値になります。
また、最終的な「ルールのメンバーシップ関数の中心・幅」や「一次係数」が表示され、どう調整されたかが見られます。
要するに
このプログラムは、
- 最初は人間の常識的なFuzzyルール(2つだけ)から始め、
- データを学習してルールの形とパラメータを自動調整し、
- 最終的に「未知の入力でもそれらしい予測」ができるようにする、
という Neuro-Fuzzyの学習の仕組みを最小例で体験するコード です。
👉 江端さんのMAS心理モデルに置き換えるなら、
「最初は常識ルールでエージェントの心理を動かす → 少しある調査データでルールや閾値を自動調整」
という使い方と全く同じです。
ご希望なら、このサンプルを「心理モデル(例: 不安・快適さ・コスト → 外出意欲)」に置き換えた例コードも書けますが、興味ありますか?
sin(x)+cos(y) が、真のターゲットした場合、 x = 辛さの度合い y = 価格の安さ とした場合、どのように言語的に説明できますか。無理矢理でナンセンスでも構いませんので、力づくで説明して下さい
いいですね、力づくの言語化でいきます。
ターゲット
を「満足度」と見なし、
xx:辛さの度合い(自分の“基準の辛さ”からのズレ)
yy:価格の“安さ”の度合い(自分の“納得価格”からのズレ)
と解釈する。
言語的対応づけ(無理矢理版)
sin(x)\sin(x)
=「辛さレゾナンス」
- 位相が合うと快楽が跳ね上がる:
x≈π/2x\approx\pi/2(=「ちょうど良い〜やや強い辛さ」)で
sin\sinは最大 → 「うお、今日の辛さドンピシャ!」。
- 物足りない側は不満:
x<0x<0側で
sin\sinはマイナス → 「辛さが死んでる、パンチがない」。
- 行き過ぎると頭打ち:ピークを過ぎると(範囲内ではまだプラスだが)上がり幅が鈍る → 「辛いは辛いが“旨みの山”は通過した感」。
cos(y)\cos(y)
=「価格信頼の波」
- 適正価格付近で安心感MAX:
y≈0y\approx0で
cos\cosは最大 → 「値段も納得、買ってよかった感」。
- 安すぎる/高すぎるは疑心暗鬼:
∣y∣|y|が大きくなると
cos\cosが下がり、やがてマイナスへ
- 激安側:
y→+y\to +大きい → 「安すぎて逆に怖い。地雷か?」
- 高値側:
y→−y\to -大きい → 「これ、ぼったくりでは…?」
→ “単調なお得感”ではなく安心と不信が交互に現れるという“心理の波”を強引に表現。
- 激安側:
合成 S=sin(x)+cos(y)S=\sin(x)+\cos(y)
=「舌の快楽波」+「値札の安心波」
- 最高潮:
x≈π/2x\approx\pi/2(辛さジャスト)かつ
y≈0y\approx0(価格ジャスト)
→ 「辛さも値段も“ちょうどいい”の共鳴で満足度ドーン!」 - 地雷気配:
x≈−x\approx -(ぬる辛)かつ
yyが大(激安)
→ 「物足りないのに安すぎて不安、満足度ガタ落ち」。 - 罪悪感コース:
xxは良いのに
y≪0y\ll0(高すぎ)
→ 「味は最高だが財布が痛い、幸せと後悔が相殺」。
ざっくり相図(範囲 [−2,2][-2,2]
を想定)
- ベスト帯:
x≈1.57(π/2)x\approx1.57(\pi/2)、
y≈0y\approx0 - ゼロ越え境界:辛さは
x≈0x\approx0で中立/価格は
y≈±1.57(±π/2)y\approx\pm1.57(\pm\pi/2)付近で“お得↔不安”を跨ぐ
- マイナス帯:
x≪0x\ll0(物足りない)や
∣y∣|y|大(激安不信・高額後悔)
一言で
舌には“辛さ共鳴器”があり、財布には“信頼共鳴器”がある。
辛さが位相一致で鳴けば
が上がり、価格が納得の位相に入れば
cos(y)\cos(y)が上がる。
この二つの“快・安”の波が同時に山を揃えると人は幸せ、どちらかが谷だと途端にモヤる――そんな“波の心理”を数式で無理矢理言語化した、という設定。