こぼれネット

しかし、現実の事故は、そのような膨大なシミュレーションの想定を、易々(やすやす)と乗り越えて、やって来るのです。

メルトダウン File.8 「後編 事故12年目の“新事実”」を見ました。

I watched "Meltdown File.8 "Part 2: New revelations 12 years after the accident""

茫然自失(ぼうぜんじしつ) ―― というのでしょうか。

I guess I could call it "stupefaction".

『テレビを見ながら、立ち竦(すく)む』という、という体験をすることになりました。

I had to go through the experience of 'standing there, stunned, watching TV.

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この番組の要旨を、乱暴に3点で纏めます。

I will summarize the gist of this program in three roughly different points.

(1)あの消防隊員の皆さんの文字通り『命をかけた』原子炉への給水が、逆にメルトダウンを加速することになった

(1) The water supply to the reactor that the firefighters literally "risked their lives" for accelerated the meltdown.

(2)原子炉の圧力を下げる「ベント」は、あの段階では「やらない方がよかった」

(2) "Venting" to reduce reactor pressure "should not have been done" at that stage

(3)ところが、上記(2)によって、原子炉の圧力が下がり、その結果、まったく予想していなかった貯水場から水が引き上げられて、結果として、溶解した燃料を冷やすことになった

(3) However, (2) above caused the reactor pressure to drop, resulting in water being pulled up from the water reservoir, which was completely unexpected, and consequently cooling the dissolved fuel.

つまり ―― その時点において「もっとも良い」と判断した選択が「最悪の事態を導き」、その「最悪の事態が、結果としてさらなる最悪の事態を防いだ」ということであり、

In other words -- the "best" choice at the time "led to the worst," and that "worst prevented further worsts" as a result.

私にとって、最大の衝撃は、

For me, the biggest shock was, that,

『システム制御を行う人間の意図と全く関係なく、勝手に事態が進み、勝手に停止した』

"The situation that proceeded on its own, and then stopped on its own, completely beyond the intentions of the people controlling the system"

ということです。

これは、原子力を制御するエンジニアにとって『完全敗北』といっても過言ではありません。

It is no exaggeration to say that this is a 'total defeat' for the engineers who control nuclear power.

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原子力発電所の運用については、電力会社や委託先の大学で、考え得る限りの事故シミュレーション(模擬試験)を行なっていると言われています。

It is said that the power companies and the universities to which they outsource the operation of nuclear power plants conduct every conceivable accident simulation.

シミュレーションの実施以前に、そのような事故シナリオを考え出すストレスは、想像を絶する苦しい作業だと思います。

I know that the stress of coming up with such an accident scenario prior to conducting the simulation is an unimaginably painful task.

しかし、現実の事故は、そのような膨大なシミュレーションの想定を、易々(やすやす)と乗り越えて、やって来るのです。

However, real accidents easily overcome such a huge number of simulation assumptions.

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以前から申し上げておりますが、制御システムというのは、自動車であれ、飛行機であれ、発電所であれ、ロケットであれ、繰り返し失敗を続けることで、その安全性や信頼性を、少しずつ向上させていくものです。

As I have said in the past, control systems, whether for automobiles, airplanes, power plants, or rockets, gradually improve their safety and reliability through repeated failures.

『"失敗"からしか学べないなら、学ぶためには"失敗"し続けなければならない』

ところが、「原子力発電所」だけは、この制御システムの大原則が使えない。

However, only "nuclear power plants" cannot use this major principle of control systems.

失敗のリターンが、メチャクチャにデカイからです。

Because, the return on failure is huge.

■事故から12年経った今でも、2万人が避難生活を続けている

"Twelve years after the accident, 20,000 people are still living in evacuation shelters"

という、現状の悲劇は勿論ですが、

This is, of course, the tragedy of the current situation, however,

■今回の事故の最悪ケースでは、東日本の全てが立ち入り禁止地区になっていた

"In the worst case scenario of this accident, all of eastern Japan would have been a no-go zone"

ことを、否定できる人間はいません。

No one can deny this.

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という訳で、私は、いつも通りの結論に至ってしまうのです。

So I come to the same conclusion as usual.

―― 日本国内において、生涯で2~3回は原発事故に遭遇し、最低1回は放射能汚染被害を受ける

私達の取り得る2つの未来

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