事業仕分けに関する一考察
新しく政権党となった民主党はがんばっていると思います。
今のところ、「事業の見える化」は応援したいと考えています。
しかし、実際のところ、私達の仕事(システムの研究)に滅茶苦茶な影響を与えているのは事実です。
イメージとしては、銃弾が豪雨のように飛び回る戦場で、次々と横にいた仲間がバタバタと撃たれて倒れて、気がつくと私ひとりが立っているイメージです。
私も片腕くらいは、手榴弾で吹き飛ばされている感じですが、それでも「仕方ないな」と諦めています。
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だって「研究」だもの。
「研究」というのは、先行投資で、簡単にいえばバクチです。
『バクチの値段を抑えて、子供の飯を買う』と言われて反論できる論理付けなんぞ、できる訳ありません。
ただ、我田引水かもしれませんが、「研究」という奴は、単純な経済法則で「動かない」点が、ちょいと多くの人には分かりにくいと思うんですよ。
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私の勤務している会社の場合ですね、「金を設ける為に研究をしよう」という殊勝な野望をもっている研究員を見たことがないんですよ。
これは、研究者の「知に対する無償の愛」と語ることもできますが、「企業利潤を無視した確信的な犯罪」とも言えます。
「私心なき知の追求」が、経済成長の中にあった時はよかった。
「研究」と「金」が成立しえる余地があったからです。
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「スパコンが本当に必要ですか?」
「ロケットの一部にしかならないような計画が必要ですか?」
私は、計算機センターで、CPUを占拠する時間を延長させる姑息な手段を駆使してきた学生時代から、GPS信号のトリッキーな使い方を検討している現在に至っております。
そんな私ですら、至極当然のあたりまえの質問だと思います。
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『世界一を回復しなければならない』 ?
違うだろう。
『このスパコンの研究を続ければ、20年後に、24時間前の地震予測を95%で達成でき、経済効果は、2050年から100年間で50兆円、のべ500万人の人命が助けられます』
『このロケットの研究が具体化すれば、2050年には、火星上に我が国が主張しうる領土が担保され、2100年迄に、1000万人の火星移住を実現し、資源、環境問題などという瑣末な問題を全て解消します』
と、嘘でもいいから、なぜ言えない?
「俺が死んだあとに、俺を誰がどう評価しようが知ったことか」と、言える我が国の役人は、もういないのか?
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「じゃあ、お前には言えるのか」と問われれば、はっきりと答えましょう。
言えないです。研究者だからです。
「インディアン、嘘つかない」とはインディアン自身が言いますが、研究者は皆、嘘が「つけない」のです。
正しい倫理観、基本と正道の理念・・・ではなく、嘘をつくと、コスト負担が大きくなるからです。
面倒なことに、研究者という奴は、嘘と次の嘘の間にも一貫性を持たせようとします。
一の嘘を論理的に帰納させる為には、指数関数的に増大する嘘の連鎖を、矛盾なく完成させなければならないという滅茶苦茶な労力が発生し、
そして、何より我々が最も辛い一言が、
「それ、論理矛盾していない?」
です。
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研究者を友人、または伴侶に持っている方は一度試されると良いかもしれません。
その友人や伴侶が、訳の分からないことを喋っていて、困った時にに言うセリフは、「よく分からない」ではありません。
内容はどうでも良いです。
とにかく、
「それ、論理矛盾していない?」
と言ってみて下さい。
相当、面白いものが見れるはずです。精神的には、研究者を即死させ得る一言です。
閑話休題
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資源のない我が国にとって、国家からの科学技術研究の投資削減は自殺行為だと、私も思います
それでも、科学技術の研究費は削られ、コスト意識なき研究は、成立しないでしょう。
純粋な学術研究の徒は消え、狡っからいマーケット理論や、嘘臭いビジネスモデルの提案に長けた、いけすかない似非研究者が跋扈することになるでしょう。
いや、もうすでに、そうなっています。
なにしろ、私も、そのように看板を取り替えないと、研究で生きていけないのですから。
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何年か後に、日本の最後の砦であった「科学技術」が事実上、消滅して国際競争力が全くなくなった時、「あの時、民主党が・・・」とは、私は言わないし、そして、私は誰にも言わせない。
ただ一点。
『為政者ではなく、私を含めた我々国民自身が、「科学技術」に「コストリターン」の導入すべきことを、国是として認めた』ということ。
どんな未来が来たとしても、この一点だけは、絶対に譲らないつもりです。