以前、私は『中国(大陸の方)」ってかなり"気の毒な国"じゃないかな』てなことを書いた記憶があります。で、ちょっと調べてもらいました。
中国の案件と日本の案件の「数・性質」の比較表を見たいです。案件のレベルで考えると、中国の方が圧倒的に面倒な問題を抱えているように見えます。
以下に、「中国の案件」と「日本の案件」の 数・性質 を同じ粒度で比較した表を示します。
案件単位で見たとき、中国が圧倒的に複雑・多層的な領土問題を抱えている構造が、一目で分かるよう整理しました。
■ 中国 vs 日本:領土・領海・領空問題の比較表(案件レベル)
| 観点 | 中国 | 日本 | コメント(性質の違い) |
|---|---|---|---|
| 案件総数(概数) | 29件 | 18件 | 中国は陸海空すべてに広範、かつ多国間係争が多い |
| 海洋案件の数 | 多数(南シナ海だけで7〜10件) | 主要は4〜5件(尖閣・竹島・東シナ海境界・沖ノ鳥島) | 中国は多国間、日本は二国間が中心 |
| 陸上国境の案件 | 大規模7件以上(インド・ブータン・ネパール・ミャンマー・中央アジア) | ゼロ(陸上国境を持たないため) | 中国の複雑さの最大要因 |
| 実際に兵士の死者が出ている領土係争 | あり(2020 ガルワン渓谷) | なし | 中国案件の軍事性の高さ |
| 多国間で重複主張される領域 | 南シナ海(5か国以上) | 存在せず | 数の多さ・複雑性が桁違い |
| “準国家”レベルの治外法権的エリア | あり(ミャンマー国境:コーカン、ワ州) | なし | 中国の特殊な国境事情 |
| 隣接する係争相手国の数 | 10か国以上 | 3か国(中国・韓国・ロシア)+北朝鮮の特殊案件 | 「産業・外交の負荷」が大きく異なる |
| 国際仲裁で否定された主張の有無 | あり(南シナ海で全面敗訴) | なし | 中国の外交的コストの増大要因 |
| 領土規模(係争地域の面積) | 合計で数十万 km² 規模 | 合計で約5,000 km² 程度(北方領土が大半) | 絶対規模が圧倒的に異なる |
| 経済回廊・インフラによる“準領土”問題 | あり(CPEC・CMEC等) | なし | 大国型の特殊問題 |
| 軍事演習が常態化している係争地 | 多数(台湾海峡・南シナ海・中印国境) | 限定的(日本周辺は主にスクランブル対応) | 危険度が違う |
| 歴史領土ナショナリズムの火種 | 強い(満洲・外蒙古・沿海州など) | 相対的に弱い | 内政安定性にも差が出る |
■ 全体評価(要点)
1. 案件数の差:29件 vs 18件
単純な数では中国が約1.6倍以上多い。
2. 質の差が非常に大きい
中国は
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陸上国境の係争
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多国間海洋係争
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有事寸前の台湾問題
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武装勢力が絡む準治外法権地帯
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経済回廊による主権リスク
など、**“多層問題+多国間+軍事性”**が重なっている。
日本は
-
海洋を中心とする“限定的な二国間係争”
-
陸上国境なし
-
多国間で領有が重複する地域なし
と、質的にかなり単純。
■ 総合すると…
◆ 結論
「案件の数」だけでなく、「複雑性」「危険性」「多国間性」「軍事性」を含めると、
中国が抱える領土問題は日本より圧倒的に“面倒”で、解決困難な構造にある。
これは客観的に見ても以下の理由から明らかである:
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中国は 14か国と陸上国境を持つ大国 → 多重の国境問題が不可避
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東南アジアでは 5か国以上と海洋領域が重複
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台湾問題は 世界最大級の地政学リスク
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中印国境は実際に死者が出るレベル
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ミャンマー国境では 中国系勢力の“半独立地域” が存在
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ロシア・中央アジアとも歴史的摩擦が残存
一方で日本は
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主に 海域中心の二国間問題
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地政学的な“戦略前線”ではあるが、
問題の数・種類は中国と比べると限定的
と言える。
うん、自宅の土地とその上の建造物だけを守ればいい私(江端)よりは、はるかに気の毒だ。