こぼれネット

『そうですね。一応、大学だけは卒業しておいた方が良いと思います』

私は、学生の6年間を、終バスが15:40分という、非常に交通の便の悪く、大学からも随分遠い地区の下宿に住んでいました。

I lived in a boarding house during my college life. It is a distant area far from the university and has terrible transportation; for example, the departure time of the last bus is 15:40.

# これは当時の話です。数年前に訪ねてみたら、大きな新興住宅地となっており、地下鉄の路線が敷設されていました。

# This is a story of those days. When I visited a few years ago, it was a big new residential area, and the subway line was built.

私は、4年間の下宿期間、ただの一度も家賃を滞納したことはなく、また大家さんのご好意で、隔日で母屋のお風呂も使わせて頂いていました。

I have never delinquent rent for a 4-year boarding period; in addition, in the landlord's favor, I was allowed to use the main house's bath every other day.

これは、その下宿でのお話です。

This is a story at the boarding house.

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ある日の夜のこと(といっても、23時過ぎくらいの深夜)、大家さんが、私の部屋をノックして訪ねてきました。

One night (around 23 o'clock midnight), the landlord visited and knocked on my room.

私に相談があるというのです。

I got a consultation.

『息子が、大学を辞めたいといっているのですが、どうしたら良いでしょうか』

"My son wants to quit college. what should I do?"

と。

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当然ですが、私、当時、現役の大学生です。

I was an active college student at the time.

幸運なことに、勉学に対して意欲のある仲間と、興味のあるテーマの研究に没頭できる、幸せな日々を過していました。

(一昨日の日記と対比してみて下さい)。

It was lucky that I had happy days. I could immerse myself in researching exciting subjects with friends motivated to study.

「大学を辞めたい」という気持ちは ―― その気持ちが「存在」することは知っていましたが ―― その気持ちを理解するには、当時の私はラッキーすぎたのです。

I knew the feeling of "wanting to quit university" "exists" and I understand that feeling. However, I was too lucky to understand the surface at the time.

そして、その時、私が口にした言葉は、私自身をびっくりさせるものでした。

And then, the words I spoke surprised me.

『そうですね。一応、大学だけは卒業しておいた方が良いと思います』

"Well. It would be better for your son to graduate from college."

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私は、今でも突飛な考えや発言を、ブログや連載に記載しています。

I am still writing fun ideas and remarks in blogs and serial series.

しかし、学生時代の私は、今の私など比較にならないほど、はるかにラディカル(過激)で、アバンギャルド(前衛的)な言動を取り続けていました。

However, as a college student, I kept on with words far more radical (extreme) and avant-garde than I am saying now.

その私が、『なんという常識的で、陳腐で、捻りのない発言をしているんだ』と、私が私に驚きました。

The saying surprised me, "What commonsense, obsolete, and boring words are!".

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その時の、私の頭の中はこんな感じだったと思います。

I think the inside of my head at that time was like this.

(1)大学は、基本的には、きちんと講義に出席をして、ノートを取って、テストを受けて、レポート(卒論)を書けば、卒業できるものである。

(1) we can graduate by attending a lecture properly, taking notes, receiving tests, and writing a report (graduation thesis).

(2)成績がどうあれ、大学を卒業さえしてしまえば、"大卒"というタイトル("学士"の資格)が漏れなく付いてくる。

(2) Whatever the grades, once we can graduate from college, the title "Bachelor's Degree" comes along without fail.

(3)"大卒"のタイトルは、それなりに世間には通用するモノである。

(3)The "Bachelor's Degree" title is acceptable for anyone worldwide.

(4)そもそも、大学合格という幸運と、学業を継続できるという幸せな環境を持っていながら、上記(1)を断念した人間を、世間はどう思うだろうか

(4) First of all, what do the public think about human beings who have abandoned the above (1) while having good luck passing the university and a happy environment where students can continue their studies

―― 私(江端)なら許さん

"I will not forgive him/her."

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もちろん、今の私は、上記(1)~(4)の考え方は、あまりにも単純化し過ぎる考え方だということを、よく知っています。

Of course, I know that the concepts (1) - (4) above are too simplistic.

娘たちは、血を吐くような言葉で、「学校」という名前の「地獄」を、私に語ってくれましたし、

My girls taught me "hell" named "school" in a word that bleeds blood.

そして、今でも私の中に残っている「学校」への憎悪の気持ちに、その時の私は思い至るべきだったのです。

And I should have considered the hatred and feelings for the "school" that remains in mine.

この手の相談を受ける時には、

When I receive consultation with these cases, I have to

『本人の資質、人間関係、精神状態、その他を総合的に勘案して判断しなければならない』

"make judgments considering the qualities of the individual, human relationships, mental conditions, etc."

のです。

結論として、『現役大学生であった私は、相談者として不適切』だったと思うのです。

In conclusion, "I was an active college student. I was inappropriate as a consultant."

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まあ、日頃から過激な発言を繰り返し記載している私ですが、根っこのところでは、

Well, I am repeatedly stating extreme remarks from my daily life. However, at the root, I am just a "petit bourgeois" being bound by

「一般常識」

"common sense"

に拘束されている、小市民です。

ですから、私ごときに ―― 「あまり過度な期待をされては困る」のです。

So, for me, "it is annoying to have too much expectation."

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