私にとって、「謙虚」は、美徳ではなく、生存戦略です。「誠実」が戦略であるように。

若い頃は、議論して勝つことは気持ちの良いことの一つだったですけど、今、私は、そういうことには興味はありません。

When I was younger, arguing and winning were some things that felt good, but now, I am not interested in that kind of thing.

そもそも、私は、自分の知識や理解が『不十分』である、という前提から出発します。

訓練されたエンジニア/研究員は、自分が「間違っていること」を前提に行動します。

To begin with, I start from the premise that my knowledge and understanding are 'insufficient.'

だから勉強をして、人の話を聞いて、自分に納得できるのであれば、自分の中に取り込みます。

So I study, I listen to others, and if it makes sense to me, I take it in.

「論破」という言葉は、私には、もの凄く下品な言葉に思えます。

"Argumentation" seems to me to be a vulgar word.

-----

私のようなエンジニアには、「論破」という考え方は、それほど必要ではないのです。

For an engineer like me, " argumentation" is not so necessary.

私の思考形態は、大体こんな感じです。

My thought form is roughly like this.

(1)考えて何かを作る、

(1) Think and make something,

(2)それが動けば「正しい」、動かなければ「間違っている」、

(2) If it works, it is "right"; if not, it is "wrong",

(3)間違っていれば、正しく動くように直す、

(3) If it is wrong, fix it so that it works correctly,

(4)それが正しいかどうか、今日分からないのであれば、明日以降に分かるかもしれない

(4) If I don't know whether it is right today, I may find out tomorrow or later.

-----

もちろん、その考え方(上記の(1))が完全にニュートラル(中立)から始まることはありません。

Of course, the idea ((1) above) does not start completely neutral.

基本的には感情(主に"怒り")から出発することは否定しません。

I do not deny that I begin from emotions (mainly "anger").

それがなかったら、取り組みを開始することすらできません。

Without it, I cannot even begin to think.

-----

以前もお話しましたが、エンジニアや研究員は「負け続ける」ことが仕事です。

As I have told you before, engineers and researchers must "keep losing."

「続ける」以上、次の勝負に出られなくなるような「大きな負け」は回避しなければなりません。

As long as I "keep losing," I must avoid "big losses" that prevent me from playing the next game.

「小さく」負け続け、まれに勝った時にも、あまり目立たないように「小さく勝つ」ようにすることが肝要です。

It is essential to keep losing "small" and, on the rare occasions when I win, try to "win small" in a less conspicuous way.

エンジニアや研究員の勝利条件というものがあるとすれば、勝敗がどうあれ、それを「小さく見せる」ことだと、私は思っています。

I believe that if there is such a thing as a winning condition for engineers and researchers, it is to "make it look small," no matter what the winners and losers are.

これは、しばしば「謙虚」というものに、『勘違い』されることが多いようです。

This is often 'mistaken' for 'humility.'

-----

私にとって、「謙虚」は、美徳ではなく、生存戦略です。

For me, "humility" is not a virtue but a survival strategy.

「誠実」が戦略であるように。

Just as "integrity" is a strategy.

ただ、最近は、このような「謙虚」という生存戦略が、近年の日本の技術進歩を妨げている要因かもしれない、と思うことが多いです。

Recently, however, I have often wondered if this survival strategy of "humility" might have hindered Japan's technological progress in recent years.

その件については、また後日。

I'll get back to you on that.

2023,江端さんの忘備録

Posted by ebata