「さっさと『9条』を改正すればいいのよ」と、あの娘が言った日 (前編)
私が学生だったころ(25年くらい前)、法律を勉強していた友人が、
「さっさと『9条』を改正すればいいのよ」
と言って、私の度肝を抜かせたことがあります。
当時の私は、大学の自治寮の寮長であり、思想的には「左」で、自動的(?)に『9条』に関しては「護憲」の立場であったと思います。
その私に正面切って「9条改正」を言い切ったのは、後にも先にも彼女だけでした。
まあ、私のスタンスを「全然知らなかった」だけかもしれませんが。
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日本国憲法第9条は、前文と併わせて、我が国の憲法の三大原則の一つである「平和主義」を規定しているものです。
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■第1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
■第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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彼女が言っていた「9条」とは、正確には「第9条2項」の、いわゆる「戦力不保持」を示しています。
「自衛隊の存在との不整合」が発生することに対する、法律を勉強する学生としての、一種のストレスだったんだろうなぁ、と今では思えます。
なお、この当時、まだ、「自衛隊を海外に派遣する」などという観念すら存在していなかったことに、留意しておいて下さい。
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現在、この「日本国憲法第9条2項」は、沢山のバンドエイドやら、包帯やらを巻きつけながら、ゼーゼーいいながら、なんとか存在している、という感じがします。
というのは、この9条2項は、どう考えても「そりゃ、ちょっと無理があるのではないか」という解釈論で逃げまくってきたからです。
いろいろな解釈があるのですが、一番有名な政府解釈を、私なりに書き下してみると、こんな感じでしょうか。
■第1項では、(1)国際紛争解決としての戦争は「ダメ」だけど、(2)自衛戦争は「ダメ」とは言っていないよね。
■第2項にいう「交戦権」とは、(1)のことを言い、(2)の自衛戦争を含まない、と読めるよね。
■だから、自衛隊の存在は「合憲」だよね。
私が思うに ―― 多分、法律家も政治家も、これを日本人であれ外国人であれ、こんな話を、その人たちに説明するのが、本当に面倒くさいんだろーな、と思うのです。
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私も最近、法律(といっても特許法ですけど)の勉強を開始して、この気持が分かるようになりました。
「解釈(定説、反対説、その他)を2つ以上覚えるのは面倒なんだよ」
「私の脳のキャパはそんなに大きくないんだから、とっとと成文化してくれよ。本当に勘弁してくれよ」
と、泣きたくなることがあります。
まあ、特許法などの知的財産権法は、2年おきにくらいにコロコロと変わりますので、別の意味で泣きたくなることもありますが。
それはさておき。
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憲法はその国の法律の最高法規ですから、この憲法に「逆らわないように」それ以外の法律が作られることになります。
その最高法規に「逆らうような」もの(例:自衛隊等)を運用している、という状態は、
多分、我が国の最高意思決定機関の長の人達にとって、
『これ以上もなく、気持の悪い状態』
ということは、想像に難くありません
私のような、知財法の初学の下っ端でも、法解釈では「イライラ」させられるくらいなのです。
そのような方々にとって、9条2項の改正というのが「悲願」というのは、本当によく理解できるのです。
(続く)