だから、あなたの利害に関わない範囲であれば、もう、「私がやっていることを、放置しておいて欲しいし、手を加えようとしないで欲しい」のです。

2024年12月21日

多くの人が、従業員(被命令者)という立場と、管理者(命令者)という立場の両方を持っています。

Many people have both the position of employee and manager.

管理者としての私は、従業員の発表(プレゼン)などを聞いた時に、何かコメントを言わなければならないことがあります。特に、何もいうことが思い浮かばなくてもです ―― どーでもいい、と思っている時など。

As a manager, there are times when I hear an employee give a presentation, etc., and I have to say something about it. Even if I can't think of anything to say--even if I don't care.

管理者の中には、「とりあえず、発表内容にケチをつけておく」という人もいます。

Some administrators say, “Let's be stingy with the presentation's content.

ケチをつけておけば、一応、管理者としての「体裁」がつくからです。

If you are stingy, you will have the “appearance” of an administrator.

これを「予定調和」というのかもしれませんが、「ケチをつけられる私」にとっては、とても迷惑です。

We can call the stingy “scheduling,” but it annoys me.

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ところが、その管理者は、その「ケチ」のことは、そのプレゼンの直後に忘れます、それは、びっくりするくらい簡単に。

The managers, however, forget about the “stingy” immediately after that presentation, which is very easy for them.

多くの人が、前回の発表のコメントと矛盾するコメントを繰り返す上司に、はらわたを煮えくりかえしてきたと思います。

I know many of you have been outraged by your bosses, who have repeatedly made comments that contradict the comments made in the previous presentation.

しかし、それは仕方がないのです。"上司は" ―― というか、"人間は"、自分の言ったことを直ぐに忘れるからです。

But it can't be helped.” Bosses” - or rather, ‘people’ - forget what they say immediately.

自分の身分を明かにせず、そして、自分の言ったことに責任を負わない ―― こんなことは、SNSを眺めているだけで明らかです。

Not revealing one's identity and not taking responsibility for what one says are apparent just by looking at social networking sites.

間違った事実が判明した後にさえ、ちゃんと謝罪と自己批判をしている人を、私は、まだ見たことがない。

I have yet to see anyone properly apologize and self-criticize, even after they were wrong.

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だから、私は、以前から「人の意見は聞くな/信じるな/真に受けるな」と言っています。

That's why I have always said, “Don't listen to/believe/take people's opinions seriously.

なぜなら、他人に意見を言う人は、ほとんどの場合、その人のことなど「どーでもいい」からです。

This is because most people who give their opinions to others “don't give a shit” about them.

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前回の「チ。 ―地球の運動について―」の 第12話 「俺は、地動説を信仰してる」では、上記の話と関係するテーゼとアンチテーゼが登場していました。

The thesis and antithesis related to the above story appeared in the previous “Chi.” On the Motion of the Earth, Episode 12, “I Believe in the Geocentric Theory.”

(1)「自分の主張は「間違っている」「真理に達していない」を前提として、批判を受け続けて、修正し続けることに意義がある」

(1) “It is meaningful to keep receiving criticism and keep correcting your claims based on the premise that they are ‘wrong’ or ”not truthful.”

という意見に対して、

In response to the opinion that,

(2)もう一人は「権力等からの干渉や批判を徹底的に排して、科学的手段(自然法則等)のみを根拠として、自分の考えを貫き通すことのみが、パラダイムシフトに足る真理に達する唯一の手段である」

(2) The other person says, “The only way to reach the truth that is sufficient for a paradigm shift is to eliminate interference and criticism from authorities, etc. thoroughly, and to stick to one's ideas based solely on scientific means (natural laws, etc.).

という主張が登場します。

This assertion appears in the following section.

で、今回の私の主張は上記の(2)になるのかもしれません。

So, my argument this time may be (2) above.

『人生をどう生きたところで、大して変わりはない。ただ、狂えるものがあれば、ちょっとだけ"おトク"かもしれない』

しかし、私は上記(1)も否定していません。

However, I do not deny (1) above either.

訓練されたエンジニア/研究員は、自分が「間違っていること」を前提に行動します。

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自分が何を言いたいのか、分からなくなってきました。

I am not sure what I am trying to say.

ただ、私は、自分の人生において『世界に何かを届けたい』などという大それた野望や、願望、立身出世など、その手のものは、もう何も残っていないのです。

I don't have any grand ambitions, aspirations, or upstandings left in my life, such as 'I want to bring something to the world.

だから、あなたの利害に関わない範囲であれば、もう、「私がやっていることを、放置しておいて欲しいし、手を加えようとしないで欲しい」のです。

So, as long as it is not against your interest, I would like you to leave me alone and not try to modify what I am doing anymore.

私も、あなたのやっていることには干渉しませんから ―― 私の利害に関わらない範囲であれば。

I will also not interfere with your work if it does not involve my interests.

私は、今の時代に必要なのは「積極的無関心」ではないかと思うのです ―― つまり、『人のことはほっとけ。自分のことだけやっとけ』です。

2024年12月21日2024,江端さんの忘備録

Posted by ebata