2013,江端さんの忘備録

あまりにも腹が立ったので、数日、この日記をリリースするのを差し止めていましたが、数日経過しても、私の気持には揺らぎがないことを確認したので、リリースします。

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教育現場において「体罰」に「効果」があるのはあたりまえです。

「銃を付きつけられたら、誰だって従う」という、この野蛮な理屈と同じであるからです。

私は、少くとも我が国は、

―― 「体罰」に「効果」はあるのは知っているが、それを「止めよう」と決めた国

であると思っていました。

例えば、クラウゼヴィッツを出すまでもなく「戦争は政治(外交)の延長である」のは自明です。

しかし、戦争が、どんなに優れた外交的効果が期待できたとしても、我が国は、

―― 決して戦争をしない、

―― 決して核兵器を持たない

と決めました。

本当に凄いことだと思います。

一方、

―― 我が国の教育現場は、「体罰」を絶対的な意味において封印した

この教育方針は、この「戦争放棄」の理念と並び立つ、我が国が誇る教育信条であると、私は、ずっと信じていました。

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「今まさに、自殺をしようとしている子供を力づくで止める為に、止むなく体罰を行使した」という、緊急避難的な状況での話なら、ともかく、だ。

高々「チームを強くする為」程度のことに、「体罰が有効だ」と、この教師は言ったそうですね。

多分、この教師は人気があって、生徒からも同僚からも信頼を得ていて、間違いなく人間として尊敬するに足ると思われている人間だろうとは思います。

なにせ「校長」から体罰を「看過」して貰っていた程の人間ですから。

だが、私は、そんなことはどうでもよいのです。

この教師は、「効果」として「体罰」をいう手段を行使した ―― この一点において、私はこの教師を絶対に許せない。

この教師は、信じられないくらい、無知で、低能で、下劣で、百万の罵声を浴びせても、まだ足りないくらいに、「最低な奴」と、私は決めつけます。

その程度の知性しかない人間が教師をやっているかと思うと、絶望的な気分になります。

『「体罰」以外のありとあらゆる手段を考えて、試して、実施して、それでも上手くいかなくて辛くて、悔しくて、そうして一人で泣く』 それが、教師だろう、と思うのです。

私は、この教師を含め、「体罰」に「効果」を求める全ての教師を、問答無用で、絶対に許しません。

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何度も書きましたが、私は、学生の頃、ギリギリまで迷い、最後の最後で「教職」を断念した人間です。

私は、自分のことを

『効率的な手段を求めて、簡単に「体罰」を行使するタイプの、狭量で卑怯な人間だ』

と自分自身で、よく判っていたからです。

だから私は、「教師」を選んだ奴には、絶対に優しく接しない。

教師という、この世で一番辛い職業を選んだのであれば、一番辛い道を歩け。

その覚悟がないなら、初めから教師なんか選択するな、馬鹿野郎めが。

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しかし、教師が生徒の全ての責任を負わされる、という今の状況は、絶対的な意味で、間違っていると思います。

「体罰」以外の方法を全て試みても、なお、思いの届かない子供もいます。

それは、もう、

―― 諦める

という選択をする時期に来ているのではないか、と思うのです。

 

それは、教師、子供、保護者、社会の全てを不幸にするものではありますが、「どっちもダメ」などと、外部の者が勝手に言うことは、甚しく卑怯であると思えるのです。

「体罰」を放棄する代償として「諦める」というのは、概ね、妥当な対価であると、私には思えます。

今回のケースに当て嵌めるのであれは、

「体罰を行使してまで強くしたチームの実力など、髪の毛程の価値もない」

で良いのです。

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金八先生や、GTOや、ごくせんは、どこにもいない。

どこにもいないからこそ、これらがドラマとして成立する。

そんなことは、もう誰もが知っていることです。

2012,江端さんの忘備録

たまたま見た、ドラえもんのアニメだったと思います。

ストーリは概ねこんな内容だったかと。

(1)のび太が、タイムマシンで見てきた未来を、「占い」として皆にしゃべっていた時、元高角三という小説家を目指しているもののデビューできずにいる男から、『自分が作家になれるか否かを占って欲しい』と言われる。

(2)のび太は、5年後へ見に行くが、彼は作家としてデビューできていなかったので、その旨を告げると、彼は「きっぱり諦める」といって去っていった。

(3)のび太は、再度、5年後の未来へ行って彼の様子を見にいくと、彼は、アルバイトを続けながら、小説を書き続けていた。

(4)のび太が「どうして、やめなかったのか」と尋ねると、彼は「小説を書いていることが、楽しいから」と笑顔で応えた。

(5)その時、沢山のテレビ局や新聞社の人が家にやってきて、彼の小説が文学賞を受賞したという報告を受ける。

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この話、(5)があっただけで、全てが台無しになった。

(4)で終っていれば、名作中の名作で終った筈なのに、「立身出世」「成功賛美」を描いただけの駄作に堕ちた、と思う。

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「楽しい」だけで、自分の好きなことを続け、世間に対して揺がない人生は、

『それ自体が「奇跡」と呼べる程の大成功である』

というメッセージを送れる、稀有な機会であったはずなのに、と思えるのです。

2018,江端さんの忘備録

(昨日の続きです)

(Continuation from yesterday)

では、なぜ、そのような大人や教育者がいないかというと、

So, why such adults and educators do not exist, is

多くの大人や、教育者になるような人は、そもそも、「狂気と孤独の世界で、かつ、たった一人で楽しんで生きる」という人生を生きなかった(or 生きれなかった)人だからです。

Many adults and educators, initially, have not lived their lives (or have not been able to live their lives) "In a world of madness and loneliness, and enjoy living alone."

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加えて、

In addition, I refer to the following facts,

(3)高い目標をかかげる夢は、概ね挫折する

(3)A dream that needs aiming high is generally broken down.

という事実にも言及しておきたいと思います。

目標のある夢の中でも、特に定量化(合格する or NOT、800点以上 or NOT)する夢は、そこに達成できない間、ずっと自分を痛め苦しめ続けます。

You will continue to suffer from aiming high, which is significantly quantifiable, such as passing or not passing and scoring over 800 points or less.

自分を痛め苦しめ続けるようなことは、継続できずに挫折します。

It is impossible to continue, and finally, it will break you down.

挫折できたなら、まだ幸運です。挫折できない場合、自分の心や体を壊し、最悪の場合、自分を殺します。

Just "breaking down" is lucky for you. If not, the dream breaks your body and mind, and, in the worst case, you will kill yourself.

これは、私の独自の調査と、私自身の体験からも明らかです。

These were based on my research activities and my experiments.

ですから、以前から私が言い続けていますが、

The following, which I have been telling you for a long time, is

―― 「夢を諦める」ことは、「夢を叶える」ことと同程度に有意義である

"Abandon of your dream is valuable for you, equal to "make your dream".

という、私のポリシーに帰着します。

That is my policy.

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ところで、

By the way,

次女が、現在、「バクマン」という漫画に嵌っています。

my second daughter is really into a comic named "Bakuman."

この漫画が、素晴しい作品であることを認めるものの、私は好きではありません。

I admit these comics are masterpieces, but I don't like them.

2024,江端さんの忘備録

昨日、「シニアは世間のトレンド(コンプライアンス等)に対して、反応速度が遅い」というようなことを書きました。

Yesterday, I wrote, “Seniors are slow to react to societal trends (such as compliance, etc.).”

しかし、シニアであったとしても、別段努力しなくても、世の中に追従していきます。

However, even if I am a senior, I will keep up with the world without making any particular effort.

以前、こんな日記を掲載しました。

I have published a diary like this before.

「笑点」に笑えず、「サザエさん」に嫌悪感を感じる ――

昨日、嫁さんの会話の中で「さだまさしの『関白宣言』は昔から不愉快であったが、最近は我慢ができない程に不快になった」という話題が出てきました。

Yesterday, in a conversation with my wife, Sadamasashi's “Kanpaku Sengen” came up, and she said that she had always found it unpleasant but that recently, it had become so offensive that she could no longer bear it.

ここで重要なことは、当時の不愉快と、今の不愉快は、そのスケールが全然違う、ということです。

The important thing here is that the scale of the unpleasantness of those days and the unpleasantness of today are entirely different.

―― "ギャグ"の一言では済まされない歌だ

私が申し上げたいことは、「シニアは世間のトレンド(コンプライアンス等)に対して、反応速度が遅い」が、「反応しない訳ではない」ということであり、シニアの価値観も『完全に固定されている訳ではない』ということです。

What I want to say is that “seniors are slow to react to trends in society (such as compliance),” but that “it does not mean that they do not react” and that the values of seniors are “not completely fixed.”

まあ、世間に100%逆らいながら生きていくのは、恐しくエネルギーが必要であり、比して、得られるリターンは「世間からの嫌悪」です。これでは割に合いません。

Well, living your life in complete defiance of society requires a lot of energy, and the only thing you get in return is “hatred from society”. This is not worth it.

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「社会的価値観は、2週間単位でバージョンアップし続けている」と、私は言い続けています。

I keep saying, “Social values are being upgraded every two weeks.”

これに追従するのは大変ですが、それでもやっていかなければ、生きていくことはできません。

It's hard to keep up with this, but if we don't do it, we won't be able to survive.

―― そもそも、そういう下品なイベント以外に、自分たちが楽しめるイベントを自力で企画・運営できない

で、思うのですが、

So, I wonder

―― 今の政権与党のバージョンアップは、どのくらいの時定数(期間)なんだろう?

"how long is the time constant (period) for the current ruling party's version upgrade?"

と思うことがあります。

少なくとも「2週間単位」ではないようように見えます。

It doesn't seem to be at least “every two weeks.”

なんか、投票日前にせっせと墓穴を掘っているように見えて、大変興味深いです(例:党非公認の候補者への資金提供)。

It's exciting to see them busily digging their graves before the election day (e.g., funding unofficial party candidates).

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私、現状を1mmも変えないまま、安全で平和な死を迎えたいだけの、バリバリの保守です(と自負しています)が、ちょっと厳しいなぁ、と思っています、

I am a staunch conservative (and I like to think so) who just wants to die peacefully and safely without changing the status quo even by 1mm, but I think it's a bit harsh.

2024,江端さんの忘備録

先日、学会のホテルの予約をしたのですが、間違って喫煙室を予約してしまいました。

The other day, I made a reservation at a hotel for a conference, but I made a mistake and booked a smoking room.

というか、今も「喫煙ルーム」って残っているんだなぁ、と、妙な感心をしてしまいました。

Or rather, I was strangely impressed that “smoking rooms” still exist.

私、以前、間違えて新幹線の喫煙席選んで、10分で頭痛がして、1時間半、ずっと立っていたことがあります(というか、昔は、新幹線に喫煙車両があったんですよ)。

I once mistakenly chose a smoking seat on the Shinkansen and got a headache after 10 minutes, so I had to stand for an hour and a half (or rather, there used to be smoking cars on the Shinkansen).

信じられないかもしれませんが、昭和は「禁煙エリア」が圧倒的に少数で、デフォルトが喫煙エリアだったのです。

Believe it or not, there were very few “no smoking” areas in the Showa period, and the default was a smoking area.

平成あたりから徐々に勢力図が変化してきて、今は、「喫煙エリア」が少数というか、かなり絶滅に置い込まれています。

Since around Heisei, the balance of power has gradually shifted, and now, “smoking areas” are few and far between or have almost become extinct.

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私の感じでは、米国から後追いで10~20年といったところでしょうか。

I think it will be 10 to 20 years behind the United States.

2000年あたりで私が米国で働いていた時は、オフィスの同僚は、完全防寒の装備をして、喫煙の為にマイナス10度の屋外に出ていきました(大袈裟ではないです。冬のコロラドは、本当にマイナス10度になります)。

When I was working in the US around the year 2000, my colleagues at the office would smoke outside in the minus 10-degree weather, fully equipped for the cold (I'm not exaggerating—it really does get minus 10 degrees in Colorado in winter).

江端さんのひとりごと 「ホワイトアウト」

『そこまでしても吸いたいのがタバコ』というものですよね。分かりますとも。

'Even if it means that much, I want to smoke.' I understand.

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喫煙エリアの縮小傾向の日米間の遅延は15年でしたが、国内における、関東エリアから地方エリアへの波及は、私の所感では「年速50km」という感じでしたね。

The delay between Japan and the US, where smoking areas were shrinking, was 15 years, but the spread from the Kanto area to the local regions of Japan was, in my opinion, like “50 km per year”.

うん、名古屋は、関東エリアから確実に6~10年は遅れていたと思う。基準は「飲食店」(の、特に"コメダ")ですね。分煙エリアがなくて驚いたことを覚えています(今は、すっかり変っていますが)。

I think Nagoya was 6 to 10 years behind the Kanto area. The benchmark is “restaurants” (especially “Komeda”). I remember being surprised that there were no smoking areas (although that has completely changed now).

これは、良いとか悪いとかの話ではなく、トレンドの浸透率には距離が関係しているという、一般の物理法則の話です。

This is not a discussion of whether something is good or bad but of the general physical law that distance is related to the penetration rate of trends.

あと世代間距離、というのもありますね。これは、コンプライアンスに関して顕著です ―― 年寄(シニア)の世間との"ズレ"というのは、避けられません。私もあなたも。努力は怠ってはなりませんが、私たち(シニア)が時代についていけないことは、もう諦めましょう。

There is also the issue of intergenerational distance. This is particularly noticeable regarding compliance - there is no avoiding the gap between the older generation and the world around them. Neither you nor I can prevent this. We must not neglect our efforts, but we must also accept that.

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西田敏之さんの代表作映画である「釣りバカ日記」が地上波で放映できないのは ―― まあ、いわゆる、放送できないんですよ。

Toshiyuki Nishida's masterpiece, “Tsuribaka Nikki,” can't be broadcast on terrestrial TV because it isn't available.

大炎上間違いなしですから(多くは語りませんが「コンプライアンス」です)。

It's sure to be a huge hit (I won't say much, but it's about “compliance”).

 

未分類

江端さんのひとりごと
「ホワイトアウト」

2001/02/10

 

昨年9月24日に、コロラド州のフォートコリンズで、私たち夫婦は、積雪15cmを越える降雪を目の当りにしました。

数日前までクーラの側に倒していたエアコンのスイッチを、暖房側に切りかえ、最大出力にしました。

と、思った次の日には、透き通った快晴の空から、紫外線をたっぷり含んだ太陽光線で、目が焼けるかと思う目にあったりもしました。

コロラドの冬は、日本の関東地区に比べれば寒いはずで、実際、夜には氷点下数度まで下るのですが、不思議なくらい寒さを感じません。

重くない、とでも言うのでしょうか。

湿度が非常に低いので、まとわりつくような寒さはないのです。

雪は一晩で15cm位積るのですが、日本の東北や北海道の地区とも違い、大抵次の日から快晴となり、2、3日で溶けてなくなってしまいます。

毎朝、玄関のドアを開けると雪が傾れこみ、積雪をラッセルしながら、会社に出社するものだと思っていた、私たちの目論見は外れ、殊、雪に関しては、今迄と変わることなく、朝の徒歩通勤を続けていますし、帰宅時には、嫁さんのピックアップで自宅に帰るのですが、会社がスタッドレスタイヤの費用も出してくれたこともあって、現在のところ、事故を起すことなく運転しているようです。

ただし、雪の降っている朝だけは、危険かもしれないと言うことで、嫁さんが会社まで自動車で送ってくれることになっています。

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私は、静謐で美しい風景、一面の銀世界、生命が息を潜めて雌伏するこの季節が好きです。

フォートコリンズは、渡り鳥のグースの中継地点となっているようで、最近は、毎朝数百羽のグースが群れとなって集まっているのを見かけます。

今朝、家の前のBoardwalk Driveを、20羽程度のグースがきれいに一列になって横断して、自動車を止めていました。

私が運転手の方の顔を見ると、「仕方ないね」と言う顔で苦笑していました。

ある朝、私がHP社の前にあるLSI Logic社の前の野原を歩いていた時のこと、抜けるような真っ青な冬の全天を、天の河の大きさもあろうかという帯が、南東から北西に向って流れていました。

それは、地平線から現れ地平線に消えていく、何千羽ものグースの群れでした。

私は、その流れの一番最後尾が見たくて、空を見上げながらその野原に立ちつくしていましたが、いつまでもその流れが止まることはありませんでした。

フォートコリンズの街の上空は、丁度、旅客機の航路となっているようで、空のキャンパスに、真っ直伸びる鮮かな白の軌跡を、時には、同時に10以上見ることもできます。

そして、後を振り向くと、藍色の空をバックに、切り立った氷河のように輝くロッキー山脈の稜線が見えます。

このように、私は毎朝、徒歩通勤を楽しんでいるのですが、やはり、雪の降った翌日の朝は格別です。

全ての建物が目映いばかりに光り輝き、息を呑むほど美しいです。

地面を踏みしめると、足がやわらかく大地に吸いこまれるような感蝕と同時に、雪の粒が煙のように舞い上ります。

雪を掌ですくい上げると、指の間から雪が流れ落ちていきます。

日本では、スキー場でさえ、こんな極上のパウダースノーにお目にかかることはできません。

マウンテンスキーの板を履いて出社する、という計画もあるのですが、フォートコリンズでは車道の除雪が徹底していることと、どうしてもまとまった積雪量にならないことから、現在のところ、実現できないでいます。

嫁さんが、帰路を迎えに来てくれるからこそ出来ることでもあるのでしょうが、こんなに楽しい1時間10分もの通勤時間を、自動車でかけ抜けてしまうのは、私には、とても勿体ないことのように思えます。

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先日、夕方から降り始めた雪は、翌朝になっても止むことなくり続けていました。

一度くらいは、降っている雪の中を歩いてみたいと思っていた私は、その日の朝を決行の日と決め、心配する嫁さんを言いきかせて、雪中行軍の準備を始めました。

テーブルの上に、いつもの通勤スタイルである、極寒仕様の毛糸の帽子と手袋、マフラー、膝まであるぶ厚い綿入りの黒のナイロンコート、インターネット経由で毎日録音している英語ニュースと、「携帯版 英会話とっさのひとこと辞典」のカセットテープとウォークマンを用意しました。

厚めのセータを着こみ、膝上まである道路工事の現場作業員御用達の長靴を履いて、準備を完了しました。

ドアを開けた瞬間、ぶ厚い冷気の壁と雪が吹き込んできて、家の中に戻されそうになりましたが、それを押し付けるようにして外に出ました。

吹雪という程のものではなかったものの、風におおられて雪が右往左往しながら、時々は真横になって宙を舞っていました。

空の低いところに灰色の雲があり、わずかに雪のガスも出てきており、視界も悪くなってきていました。

多分、気温は氷点下10度くらいだっただろうと思います。

流石に除雪も間にあわなかったのか、Oakridge Driveの道も真っ白なまま、自動車のタイヤに圧雪されて、理想的なアイスバーンとなっていました。

しかしそんな道路を、この街の人達は、ノーマルタイヤで、車体をドリフトさせながら平気で運転しています。

流石、としか言いようがありません。

雪の上を歩く時は、そのわずかな雪の高さを見て、車道と歩道を見分る必要があります。

間違えて車道側に足を踏み入れると、そのまま車道に転げ落ちていく恐れがあるからです。

抜群の視力を誇る私でさえも、今朝は車道と歩道の境界が見えません。

それは、一つに、雪が降り続いていることと、もう一つは、目を開け続けていることが出来なかったからです。

私は、全身を防寒着で完全にくるんでいたのですが、唯一、目の部分だけを覆うことは出来ませんでした。

そんなことをしたら、何も見えなくなって、歩く以前の問題です。

風にあおられた雪が目に飛びこんでくる時は、ちょっとした痛みを感じますが、それ自身は大したことではありません。

問題なのは、その後です。

その状態では雪の結晶が眼球に張りついて見えなくなりますので、瞬きをすることで、その雪を解かすのですが、これが涙と一緒になって目の外に出ます。

この涙がやっかいなのです。

この涙は、一秒もしないうちにアイラインで氷結します。

そして次の瞬きに、瞼の上と下のアイラインの氷がぶつかり、一瞬溶け、そして、この上下の氷は一つになって一瞬の間に凍ってしまうのです。

この結果は明白。

目が開かなくなるのです。

指で目を擦ると、指についた雪が、さらに事態を悪くしまうので、力を込めて瞼を開けます。

こういうことは、日常生活ではめったに体験できないでしょう。

力づくで瞼を開くことを続けている内に、今度は睫(まつげ)に小さな氷柱が出来てきて、瞼が重くなってきます。

よく、眠くなることを「瞼が重くなってくる」と言う言い方をしますが、喩えでもなんでもなく、本当に『お、重い・・・』。

不思議なもので、瞼が重くなってくると、本当に寝くなってきました。

雪の中の歩行は、普通の歩行より何倍も体力を使います。

雪の吹き溜りを踏みつけて、体のバランスを崩しながら歩かねばなりませんし、以前降った雪が溶けずに、完全に氷結して氷河となったような場所も越えて行かねばなりません。

普段よりも集中力が要求されるのです。

加えて、時折襲ってくる横なぐりの雪の束に目も開けていられません。 運悪く、昨夜は眠りが浅い上に5時間くらいしか寝れなかったので、普通よりコンディションも悪かったのです。

眠ったら終りだ・・・

この時、私を支えていた思いは、「美しい妻や可愛い娘を残して死ねるものか」と言う想い・・・ではなく、『雪の中を徒歩通勤していた変な東洋人、通勤途中にて凍死』とフォートコリンズ新聞の一面に掲載されるであろう記事と、葬式の際に、ハンカチを握りしめて、うつむきながら、泣いているふりをしながら、笑いを堪えている参列者の光景でした。

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HPの正門前で、ウォークマンのカセットテープが終ったので、ナイロンコートのポケットからウォークマンを取り出して、テープを裏返しして、再生のボタンを押したのですが、うんともすんともいいません。

変だな、と思って、あちこちのボタンを押して見たのですが、上手く再生してくれません。

その時、このような機械が保証する動作環境の温度は、確か下は0度から、上は50度くらいだったことに、はたと気が付きました。

私は、HP社の門の前に立ちすくみながら、氷点下10度より低い極寒仕様のウォークマンなど、どこにも売っていないんだろうな、とぼんやり考えていました。

その時の私は、毛糸の帽子に雪を積らせ、手袋は内部から凍りつき、長靴の中に入ってしまった氷が、溶けずに凍ったまま残っていると言う状態で、体も思うように動かすことができず、雪の平原を彷う、黒装束のゾンビのような状態だったと思います。

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Harmonyの徒歩通勤者

"Walking Pedestrian in Harmony Road"

は、今では、HPはもとより、フォートコリンズでもすっかり有名になっているだろうと思います。

そのうち、私の通勤路である野原に、地元のテレビ局の車が待ち構えてインタビューをしてくる時の為に、すでに私の頭の中では英語の質疑応答集が出き上がっています。

"Why have you kept walking on this field, that is NOT a road, every day ?"

"I can always feel the existence of GOD through walking in the field. It is a kind of a field of talking to GOD."

フォートコリンズの教会の、名誉司教くらいには成れるかもしれません。

そんな風に、私の通勤風景に慣れたフォートコリンズ市民も、その日の私を見て、皆、一様にぎょっとしていました。

私の行為が、神秘の国ジパングの名を、ますます高めているものだと自負しております。

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まあ、街の中だし、比較的視界も良く、ホワイトアウトを喰らって『HPはぁ!HPは、どっちだぁぁぁ!!!』などと叫ぶような場面もなく、いつもより15分遅れで、無事会社に到着しました。

寒くて痛くて結構辛かったけど、やっぱり楽しかったな、と思えました。

私は、根っからのスキーヤーなんだ、と再認識しました

その日、嫁さんのピックアップで自宅に付き、ふと、テーブルの隅の方を見ると、そこには昨夜久々に読み直し終えた、真保裕一の「ホワイトアウト」が置かれていました。

『俺が今行かなかったら、誰がHPと日立を救えるのだ!』

などと言うような、馬鹿な妄想に憑かれて、雪中行軍をしようとしていた訳では断じてないと思っていますが、もしかしたら、自分の気が付かないところで、何かのスイッチが入っていたのかもしれません。

 

(本文章は、全文を掲載し内容を一切変更せず著者を明記する限りにおいて、転載して頂いて構いません。)

2024,江端さんの忘備録

私(江端)の公民権、まだ停止されていないようでした。

My (Ebata's) civil rights had not yet been suspended.

今朝、ポストに届いていたようです。

It appears that the voting form was delivered to the postbox this morning.

―― そうか・・・、ついに私も公民権を停止されたのか・・・

『投票用紙が届く喜び』というのを、皆さんにも実感して欲しい。

I want everyone to experience the joy of receiving a ballot.

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ちなみに、私は、自由民権運動発祥の地の居住民です ―― だから、どうだという訳でもありませんが。

Incidentally, I am a resident of the birthplace of the Freedom and People's Rights Movement - so it's not like it means anything.

いずれにしても、国家であれ、市町村であれ、『変な形をした行政地区』があれば、先ずは『過去の政争(または戦争)』を疑ってみると良いと思います。

 

2024,江端さんの技術メモ

<!-- Way: Dummy Railway Line for JR篠栗線 -->
<way id="123456800" version="1" timestamp="2024-08-22T06:13:26Z" changeset="99999999" uid="999999" user="kobore.net">
<nd ref="1882462094" /> <!-- 博多駅 -->
<nd ref="1239476659" /> <!-- 吉塚駅 -->
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<nd ref="796761953" /> <!-- 筑前山手駅 -->
<nd ref="796761953" /> <!-- 城戸南蔵院前駅 -->
<tag k="railway" v="dummyrail" />
<tag k="name" v="Dummy Railway Line JR篠栗線" />
</way>

このデータを、

<relation id="17960683" version="1" timestamp="2024-08-22T06:13:26Z" changeset="155587618" uid="109705" user="gscholz">
<member type="way" ref="1309534187" role="outer"/>
<member type="way" ref="1309192923" role="inner"/>
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<member type="way" ref="733239311" role="inner"/>
<member type="way" ref="1309192927" role="inner"/>
<tag k="highway" v="pedestrian"/>
<tag k="surface" v="gravel"/>
<tag k="type" v="multipolygon"/>
</relation>

この辺に置いた

</osm>

こうしたら、

G:\home\ebata\hakata\hakata_db>osm2pgrouting -f hakata_ex.osm -c mapconfig_for_ex.xml -d hakata_ex_db -U postgres -h localhost -p 15432 -W password 

でDBの作成に失敗しました。

wayのタグはwayのタグの集まっているところに置いておかないと、DBの作成で失敗するようです。

JOSMで地図を改ざんして道路と鉄道を交えた最⼩コスト経路探索をやってみよう-完全版

 

 

 

未分類

https://github.com/pgRouting/osm2pgrouting

 

pgRouting/osm2pgroutingmapconfig.xml ファイルは、OSM(OpenStreetMap)データを pgRouting データベースにインポートする際に使用される設定ファイルです。これらのファイルの違いは、主にインポートするデータの内容やデータに付与する属性の違いによって、特定の交通手段(自転車、自動車、歩行者)に適したルーティングデータを作成することを目的としています。

以下、それぞれのファイルの主な特徴と違いを説明します。

1. mapconfig.xml

このファイルは、デフォルトの設定を提供し、特定の交通手段に偏らない一般的なマップ構成を示します。OSMデータからすべての主要な道路(自動車用、歩行者用、自転車用など)をインポートし、基本的な属性情報(長さ、速度制限、道路種別など)を含めたルーティングデータを作成します。

2. mapconfig_for_bicycles.xml

このファイルは、自転車での移動に最適化されたデータ構造をインポートするための設定です。以下のような特徴があります。

  • 自転車道(cycleway)のタグを含める。
  • 車両用道路の中でも、自転車の通行が認められている道路に注目。
  • bicycle=yescycleway=lane といったOSMタグに対応。
  • 自転車専用のレーンや、速度制限が自転車向けに低く設定されている道路を考慮。

3. mapconfig_for_cars.xml

このファイルは、自動車での移動に最適化された設定です。以下のような特徴があります。

  • 自動車専用道路や高速道路のインポート。
  • 自動車が通行可能な道路を重視し、motor_vehicle=yeshighway=motorway などのタグに対応。
  • 速度制限(maxspeed)や、交差点におけるターンレーン(turn restrictions)の情報を考慮。
  • 歩行者専用道路や自転車専用道路を除外。

4. mapconfig_for_pedestrian.xml

このファイルは、歩行者の移動に最適化された設定です。以下のような特徴があります。

  • 歩道(footway)や歩行者専用道路を重視。
  • foot=yeshighway=footway といったタグに対応し、歩行者がアクセス可能な道路を含む。
  • 自転車専用や自動車専用の道路を除外する。
  • 公園内の小道や、都市部の歩行者専用エリアを考慮。

まとめ

これらのファイルは、osm2pgrouting で OSM データをインポートするときに、特定の交通手段に適したルーティングデータを作成するための設定ファイルです。それぞれのファイルは、交通手段ごとの特徴を考慮し、OSMタグの選別や属性の付与を行います。

  1. mapconfig.xml: 全体的なデフォルト設定。
  2. mapconfig_for_bicycles.xml: 自転車用のデータ設定。
  3. mapconfig_for_cars.xml: 自動車用のデータ設定。
  4. mapconfig_for_pedestrian.xml: 歩行者用のデータ設定。

このように、これらの設定ファイルは、pgRoutingを使った経路探索の精度を高めるため、異なる移動手段に応じた最適なマップデータを生成するために使用されます。

2024,江端さんの忘備録

嫁さんと期日前投票にでかけようと思ったのですが、嫁さんに『投票用紙、届いていないよ』といわれて、驚きました。

I was going to go out with my wife to vote early, but I was surprised when she told me, “We haven't received the voting form yet.”

―― そうか・・・、ついに私も公民権を停止されたのか・・・

"I see... So I've finally had my civil rights suspended..."

『最近、ブログで選挙批判を繰り返してきたので、権力サイドに目をつけられたのかもしれないなぁ』とも思ったのですが、嫁さんにも届いていない、というのは「変だ」と思いました。

'I've been repeatedly criticizing the election on my blog recently, so maybe I've caught the attention of the powers that be,' I thought, but it was strange that my wife hadn't received it.

もしかしたら、「公民権停止に、身内の連座制も導入されたのか? いつ法律が改正された?」とか、かなり真剣に考えていました。

I was thinking quite seriously, “Did they also introduce a system of guilt by association for suspending civil rights? When was the law amended?”

さて、これから「マスクをしない方は、入店を御遠慮下さい」が、「ワクチン接種を終えていない方は、入店を御遠慮下さい」に変化していくに際して、『これは、"差別"なのか?』という純粋な疑問です。

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嫁さんが、市役所のホームページを調べて、『投票用紙の発送は20日から開始となっているから、明日には届くんじゃないの?』と言って、ちょっと安心しました。

My wife checked the city hall website and said, “The voting forms are supposed to start being sent out on the 20th, so I think they'll arrive tomorrow,” which made me feel more at ease.

それにしても、期日前投票が始まっているのに、投票所に行かせてもらえない、というのは、結構な恐怖ですよ。

Even so, it's quite a frightening thing to be unable to go to the polling station even though early voting has already started.

「投票用紙が届かない/届けない」というのは、国家レベルの『いじめ』または『村八分』になりえる、と実感しました。

I realized that not receiving or not sending a ballot could be considered national-level bullying or ostracism.

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ただ、本件に関しては、さすがに市役所等の(行政の)人たちを責めることはできないでしょう。

However, you can't blame the people at the city hall or other administrative offices for this.

公示から投票までの期間が短かすぎます。

The period between the public announcement and the voting is too short.

これはについては、投票日を決定した総理(官邸or与党)が悪い。

The prime minister (or the ruling party) who decides the election date is to blame for this.

考えてみると、今回の選挙は『4年前から投票日が決まっている米国大統領選挙よりも、遅く公示され、早く行われる選挙』ですね。

This is 'an election that was announced later and held earlier than the US presidential election, for which the date of the vote has been decided four years in advance.'

投票システムの違いを、しみじみと実感しています。

I am keenly aware of the differences between the voting systems in Japan and the United States.

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